47 えー、家に帰りたいんですけどー
富永氏のマンションに着いて、春菜さんに持たされたものを、富永氏の部屋へと運び込んだ。
Q ……で、なんでその片づけに付き合っているのだろう?
A それは春菜さんが持たせた袋の中に、私にくれるという服が入っていたから。
袋の中から服を出して、ハンガーへとかけて……いや、待って。これはどうするのよ。私の部屋に持って帰るの? えっ? どこに着て行けと!
いや、その前にこの服って、私は入るのだろうか?
そんなことを考えていると、富永氏にはお見通しだったらしく「着てみたらどうだ」と言われてしまった。確かに一度身に着けてみるのが手っ取り早いだろう。
ため息をつきながら服の山を抱えて、客間へと向かう。
「着たら見せろよ」
「何でですか!」
「感じがわからないだろう」
言われて持っている服に視線を向けた。確かにいろいろなものがある。私はもう一度ため息をつくと「わかりました」と答えて、客間へと行った。
数時間後です。今いるところは、何故かホームセンタ―ですことよ。理由はあの服の山をかけるハンガーやら何やらを買いに来たのよ。おかしいな。今頃は家に帰っていて、干した布団を取り込むくらいの時間のはずなのに。
買うものを買って、車に乗せて(もちろん、ここまで私が運転してきました)只今、お茶とドーナッツを前に一休みタイムです。糖分を補給して、やっと頭が回るようになった私は気がついた。
「課長、別に今日、全部の服を試着する必要はなかったですよね」
「ん? そう言われてみればそうかもな」
「あと、服もハンガーにすぐに掛けないといけない、というわけではないものも、ありましたよね。収納ケースなんて、いらないですよね」
ジト目で見たら、何故かフッと笑われてしまった。
「大石、家にはアイロンはないからな。しわになったら、どうするつもりだったんだ」
ぐぬっ。そう来たか。
「それなら、私が次に来る時にアイロンを持ってきます。……いや、待って。その前にその服を着て、どこに出かけるの」
「それは服装によるだろうな。……そうか、大石はそういうのに慣れていないのか」
何故かまた、納得をする、富永氏でした。