表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

52/216

46 帰りの車は私が運転します

「それじゃあ、どうしたらいいのかしらね」


 電話が終るのを待っていたように、春菜さんが言った。車を置いていくのは邪魔になるということなのでしょう。


「私が運転して富永氏のマンションまで戻ります」

「まあ、いいの」

「はい。私もそろそろレンタカーを借りて運転したいと思っていましたから」

「あら~、茉莉さんは車を持っていないのね」

「そうなのです。通勤には使いませんし、駐車場を借りて置いておくのも無駄になりますから。それなら月に2回くらいレンタルした方が、安くすみますし、運転も忘れませんから」


 そう答えたら、春菜さんがにっこりと笑った。


「じゃあ、ちょうどいいじゃない。茉莉さんに運転してもらって帰りなさいね」


 富永氏に口を挟ませずに、話はついてしまいましたとさ(笑)



 富永氏は少し渋りましたが、おとなしく助手席に座りました。挨拶をして滝浪邸を後にしました。2週間ぶりの運転に私の気持ちは上がりました。


「運転がうまいな」


 隣からボソッとした声が聞こえてきました。なんか不機嫌そうです。……これはあれですかね。男が運転するものだとでも、思っているとか? 


「運転をするのは、嫌いではないですから」


 この言葉だけじゃフォローにならないかと思い、もう少し言葉を足すことにした。


「富永氏の運転はへたではないですよ。長年の習慣により癖になっているだけです。すぐに日本での運転に慣れると思いますよ」


 しばらく何かを考えていた富永氏が「それなら」と、言った。


「大石の言う通りにこっちでの運転に慣れるためにも、なるべく車に乗った方がいいんだよな」

「そういうことになりますかね」

「それじゃあ、来週は少し遠出をするから付き合え」

「はっ?」

「こんな情けない状態なのを、他のやつに知られるのは嫌だからな。知っている奴に付き合ってもらった方がいいだろう。それも運転がうまいやつなら尚更だな」


 丁度信号が赤で止まったので、私は助手席のほうを向いた。富永氏はいいことを思いついたというように、口元に笑みを浮かべていた。


 ……私は、『そこまで付き合う必要はないでしょ』と言いかけて、口を噤んだ。どっちにしろ3か月間は春菜さんにお世話になるのだ。富永氏には一昨日から世話をかけている。付き合うことでお礼になるのなら、それでいいかと思ったのでした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ