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外話 私が出来ない、いろいろなことは妻がフォローしてくれる……だろう

 風呂を出て部屋に戻り、知らずにため息を吐き出した。それを聞き咎めた妻が、話しかけてきた。


「お疲れのようですわね、あなた」

「ああ、まあな。やっと、第一段階が終了したからな」


 ドレッサーのところで化粧水などで肌を整えていた妻が、そばへと来た。


「ねえあなた、茉莉さんってどういう子なの」


 妻の問いの意味が解らずに、妻の顔を見つめた。妻は眉間を軽く寄せるようにしている。


「どういうって? 春菜から見た茉莉くんはどんな子に見えたんだい」

「そうねえ」


 私の問いに妻は少し考えこんだ。


「とてもいい子だと思うのよ。家に急に連れてこられたみたいだったけど、それを嫌がっている風には見えなかったわ。挨拶をした後、私と克明の話が終わるまで待っていたし、恐縮しつつも受けるところは受けてくれたしね。それにちゃんとわかってくれて、歌舞伎に行くことを選んでいたわ。あなたが今朝、急に『歌舞伎に行かない。これは克明たちに譲る』と言った時には驚いたけど、チケットが無駄にならなくてよかったわ」


 そう言ってニコリと笑う妻。


「それで、私から見た茉莉さんを聞いて、あなたはどうしたいの?」


 続けて言われた言葉に、妻はやはり甘くないと思った。先ほど漏れた本音で、気がついてしまったようだ。


「まさかとは思うけど、茉莉さんを克明のお嫁さんにするために、画策しているのではないでしょうね」

「出来れば二人が結婚してくれることが望ましいけど、私からは何もできないんだよ」

「まあ、それはどういうことかしら?」


 妻に隠し事をすると後が怖いから、本当のことを言った。ついでに少し愚痴っぽく言ってみた。それに妻が食いついてくれた。


 この2年。本当に克明が早く帰ってきてくれれば、ここまで胃の痛い思いはしなかったのにと思いながら、妻に差しさわりの無い部分を話した。


 先ほどは大人げなく息子に八つ当たりをしてしまった。それを感じとった息子が、また可愛くない反応を返してきたのも悪い。茉莉くんのことは私には手が出せない。出せないから、息子に期待するしかないのに。


 息子に話せない茉莉くんの事情を聞いた妻は「あらあら、まあまあ」と、コロコロと笑った。


「責任重大ね、克明は。わかりましたわ。私も全力で持って、茉莉さんを教え導きたいと思うわ」


 ……なんか、妻のやる気を引き出してしまったようだけど、これはこれでいい……ことにしておこう。


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