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閑話 嫁候補……じゃないのかよ!

「そういうわけで秘書課に来てもらったんだが、これがすごい拾いものでな」


 父が嬉しそうに笑った。これは説明されなくてもわかる。この2週間で嫌というほど、思い知らされたからな。


 毎朝、本部長秘書(・・・・・)として連絡事項を確認して、スケジュールの調整をささっとし、俺が課長(・・)として課内のことをしているときも、さりげなく予定の時間が近づいていることを、他にはわからないように教えてくれる。変則的な二重生活も彼女のおかげで成り立っているようなものだ。俺に回る前の書類にチェックを入れて、直しの部分を指摘してくれるから、俺も営業に出る奴らのほうを重点的に見ることが出来ている。


 よく、親父が手放したと逆に感心してしまった。というよりも、彼女以外では俺の補佐は出来ないということも、納得できた。



「それで、俺にさっさと戻って来いと言っていたのは、彼女を俺の嫁にするためか?」


 この2年、しつこいくらいに言われ続けた言葉。


『いい娘がいるんだ。会うだけ会ってみないか』


 確かに彼女なら、そう言いたくなるのもわかる。……というか、政略的な見合いを疑って帰ろうとしなかったのは俺だったけどな。


 なのに、父に鼻で笑われてしまった。


「はっ! そんなもったいない事するか。さっきも言っただろう。お前が気に入ったのなら、自力で口説き落としてみろ。引き合わせるのはしてやった(・・・・・)んだからな。まさか、そこまでお膳立てされなきゃ、茉莉くんを落とせないというのか。だったら、ちゃんと見合いの席を組んでやるよ」

「いらねえよ。これから彼女を、自分で口説くからな。邪魔をしないんだったらそれだけでいい」

「はっは。お前は甘ちゃんだからな。今まで寄ってくる女しか知らんだろう。気のない相手を口説けるのか」

「うるせーな。見てろよ。1年以内に恋人として紹介してやるからな!」



 このあと、実家に彼女と泊まることになり、客間で寝る彼女を部屋に送っていった。意識させようとしたのに……彼女の可愛さ&無自覚発言に撃沈したのだった。


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