閑話 尾石たちへの本当のやり返し その2
そこに冷静な東田の声が聞こえてきた。
『先ほどから聞いていれば、自社の重役を貶めるようなことを言っていますね。このようなことを言っていたと知ったら、上の方々はどう思われるでしょうか? まあ、私には関係がないからいいですけど。でも、先ほどから看過できないことを言ってましたね。もともとゲスい思惑から大石さんに声を掛けておきながら、上手くいかなかったからと貶める。このことは、社長の息子である、滝浪本部長にお伝えしておきます。ああ、ご安心ください。本部長どころか社長まで、あなた方が大石さんに仕掛けたことは知っておりますから。私は発表の時の反応を報告してくれと言われたので、あなた方のそばにいました』
東田はとてもいい笑顔で言い切った。言われたことを、飲み込んだものから顔色を蒼くしていく男たち。
『それでは、私は失礼しますね』
そう言って立ち去りかけた東田は、立ち止まると彼らのそばに戻って声を低めて言った。
『あれだけ普通に話していたのですから、私が言わなくても上の方々の耳に入ることでしょう。自業自得ですね。ご愁傷様です』
そう言うと、東田は離れていった。
『おい、どうする』
『どうするって……どうすればいいんだ』
『謝って……許してもらう?』
『誰に謝るんだよ』
『そもそもこの会話が耳に入るのかどうかも分からないだろ』
『じゃあ、どうするんだよ!』
『あいつに口止め……って、どこに行ったんだ?』
『あー、身の破滅だ―――!』
『シッ! 声が大きいって!』
『声の大きさなんかどうでもいいだろ!』
『だから、ここで騒いで、何があったって聞かれたらどうすんだよ!』
『……ほんと、どうしよう……』
青い顔でパニック気味に言い合う彼らの姿が、もうしばらく映っていたのだった。
東田が言うように社長以下重役は、彼らが茉莉に行おうとしたことを知っている。なので、彼らに対する心証はとにかく悪い。この動画の内容を知れば、もっと悪くなることだろう。
大体、彼らの勤務態度は真面目とはいいがたいものがあると聞いた。場合によっては出向まで視野に入れて、この先のことを考えなければいけないかもしれないと、思ったのだった。
さて、茉莉は察したらしく、「証拠の映像を見せて」と言ってきた。俺は見せるつもりはなかったので、話を逸らそうとした。
しばらく茉莉と睨み合いが続いたが、あのあとは東田たちもパーティーを楽しんだとわかり、機嫌を直してくれた……ようだ。




