閑話 尾石たちへの本当のやり返し その1
茉莉がお風呂に入っている間に、携帯に届いたメッセージを確認していた俺は、東田から送られてきたメッセージを見つけた。
『 発表前後のようすを!
本部長、発表前後の彼らの様子を撮りました。
大石さんへの侮辱発言がありましたので、本部長の名前を出させていただいて、脅してしまいました。
事後承諾で、すみません!
東田 』
添付されていた内容を確認したら、案の定クズいことを言っている奴らが映っていた。
まずは、俺と茉莉の婚約が発表をされて、俺たちが並んだ姿が見えたところから始まった。
そのあとすぐに数人の男に切り替わった。
『えっ? おい、尾石』
『うっそだろ』
『おいおい。玉の輿に乗り損ねたな』
『うるせーよ、お前ら』
茉莉の姿を見て、尾石のことを見る男たち。尾石は機嫌が悪そうな顔をしている。乾杯をしないわけにはいかないからか、渋い顔でグラスを傾けていた。
『いやー、逃した魚は大きいってか。なあ、尾石』
『だから、うるせーって』
『結局彼女に逃げられて、大損したもんな』
『はん。あんな尻軽女はこっちから願い下げだよ』
仲間たちに揶揄われて、尾石は不機嫌に答えた。
『よく言うよ。相手にされなかったのはお前だろ』
『だから、ちげーって。あの女、地味なふりして重役たちと懇ろにしてたんだよ。そんな女だってわかったから、こっちが別れてやったんだ』
『えっ、まじ?』
『ああ。不思議に思わなかったのか、お前ら。あの女が地味にしていたのは、重役の奥様方にバレないためさ。奥様方だって、まさかあんな地味女と旦那が……だなんて、思わないだろ』
『ええっ! カモフラージュだったのかよ』
『そうでなければ、俺とつき合いだして、会おうとしないなんておかしいだろ』
『おいおいおいおい。いいのかよ、そんな重役の秘密をしゃっべっても」
『生憎と俺はあの女の相手が誰かなんて知らないんだ。……でも、本部長も貧乏くじを引いたよな』
『ん? ああ、本部長は海外から戻ってきたんだったな。それなら知らないか』
『だろ。……って、なんだよ、お前』
俺は呆れて画面の中のやつらのことを見つめた。
寄りにもよって何を言ってんだ、こいつらは?
この言い方は茉莉が重役をしている方々の、公認の愛人だと、言いたいのか?




