閑話 創立50周年パーティーが終わって
茉莉と共に自宅へ戻り、シャワーを浴びてくつろぎタイム。茉莉の腰を抱いてソファーで祝杯を挙げている。
茉莉は、最初は恥ずかしそうにしていたけど、恋人同士なら当たり前という俺の言葉を信じて、膝の上におとなしく座っている。
視線があちこちに行って目が合わないのが、面白くない。
グラスを置いて、茉莉を引き寄せた。茉莉は……グラスを持っていないほうの手で、俺の胸を押して突っ張って抵抗をしている。抵抗を封じる意味で顎に手を掛けて上を向かせた。唇を寄せようとしたところで……冷たいものを唇にあてられた。見れば、グラスを俺へと押しつけている。
「茉莉」
「なーに? 克明さん」
咎める声を出せば、冷ややかな声と笑っていない目の笑顔が返ってきた。思わず腕の力を抜けば、茉莉は俺から離れて別のソファーへと移動した。
「茉莉、これじゃあ茉莉を労われないだろ」
「そう言うんだったら、心ゆく迄お酒を楽しませてよね」
非常に可愛くない返事が返ってきた。……後で覚えてろよ、と、心の中で誓った俺だった。
「それにしても、克明さんも楽しそうだったわよね。そんなに三隅さんたちの『美人に変身させて悔しがらせよう!作戦』が、上手くいったことが嬉しかったの?」
茉莉がワインが入ったグラスを揺らしながらそう言った。
「違うぞ。尾石が、賭けをした仲間といろいろ言っていたと、東田たちから報告を受けたからだよ」
「尾石? ……誰でしたっけ?」
茉莉は本当に覚えていないのか、怪訝な顔をしている。茉莉にとっては、本当にもうどうでもいいことになり果てているようだ。
押さえきれずに声をあげて笑っていたら、茉莉は思い出したのか「ああ!」と声をあげた。
「えっ? 東田さんたちに張り付かせていたんですか。ダメじゃないですか。東田さんたちが楽しめないことをするなんて」
「大丈夫だ。俺たちの婚約の紹介まで、彼らのそばにいるように頼んだだけだ。乾杯後は東田たちも自由にしたはずだから」
そう、茉莉に答えながらも、先ほど貰った動画を思い出して、また笑いが込み上げてきたのだった。




