169 創立50周年パーティー その4
さて、パーティーの主役と化してしまったので、克明さんと仲良く来賓の皆様からの祝辞を、頂戴しております。
やっと人が切れて、会場を見回す余裕が出来ました。
営業2課の女性たち……は、探すまでもなくすぐに見つかりました。丁度男性たちに連れられて、私たちのところに来たのでね。
「ご婚約おめでとうございます」
「「ありがとうございます」」
にこやかに話しかける2課の男性たち。私と克明さんはお礼を言い……克明さんは男性に取り囲まれました。
で、私は女性たちに囲まれたのですが、皆さんに睨まれています。
「ひどいわ、大石さん」
「本当です。こんな不意打ちって、ないです」
少し涙目で見てくるけど……克明さんを囲んでいる男性たちが、心配そうな眼をしながら鼻の下を伸ばしていた……(笑)
「まあまあ。でも、まんざらでもないんじゃないの」
私の言葉に三隅さんたちは顔を見合わせてから、嬉しそうに微笑んだ。
「とても、綺麗よ」
「それをあなたが言うの?」
褒めたのにすかさず三隅さんに咎められた。……解せぬ?
私が考えたことを見透したみたいに、三隅さんは小さく息を吐きだした。
「本当にここまで化けるだなんて。もともと地味にしていただけで、元がいいのは解っていたのよね」
面白くなさそうに、そっぽを向いて言う三隅さん。他の女性たちは困ったように笑っている。
「それで、どうなの。私たちにまでこんな格好をさせたんだから、あなたの目論見は成功したってことでしょう」
「なぜ、そう思うの」
そう返したら、三隅さんを含めた五人は綺麗な笑顔を見せた。
「だぁってねえ」
「ええ、彼女達にあんな顔を向けられたらね」
「嫌でも察するわよ」
おお~! それなら、彼女達へのやり返しになったみたいだね。
まあ、私が里碕工業の社長の孫と紹介されて前に立った時のあの表情だけでも、彼女達へのやり返しとしては十分でしょうけどね。
「怖っ。これからは、大石さんは怒らせないようにしないと」
「ああ、俺もそう思う」
小声で言っているけど、聞こえているからな。永井君、吉田君、後で覚悟しろよ!
彼らの後頭部を睨みつけたら、察したらしく克明さんに助けを求めだした。
「すんません。余計なこと言いました」
「富永さん、助けてください!」
「おい、富永さんじゃないって」
「そうでした。滝浪本部長!」
思わず三隅さんたちと顔を見合わせて笑ってしまったよ。




