167 創立50周年パーティー その2
支度が済んで、克明さんと合流しました。控室として借りた部屋で待機中です。
「緊張してないか、茉莉」
克明さんが労わるように言ってくれています。
「大丈夫よ。私、そんなに軟じゃないもの」
「それは知っているけど、普段と違うわけだし」
気遣ってくれる克明さん、優しい~。
私は口元に笑みを浮かべて言いました。
「克明さんこそ、ちゃんと私をエスコートしてよね」
「そこは任せてくれ」
余裕の笑みを浮かべる克明さん。うん。いつもよりも出来る男感がアップしていて、イケメン度が上がっている気がします。
これは新調されたスーツのためだけではないよね。
コンコン
そこに控えめなノックの音がしました。
「はい、どうぞ」
克明さんの返事に扉が開いて顔を見せたのは三隅さん。
「御来賓の方々がお見えになりました」
「わかった。それじゃあ、行こうか、茉莉」
「ええ。……でも、その前に。三隅さん、他の2課の女性たちと、こちらの方について行ってもらえるかな?」
私の言葉に怪訝な顔をする三隅さん。このような予定は聞かされていなかったから。
でも、なにかパーティーに必要なことなのだろうと思ったのだろう「はい」と答えて頷いてくれた。
私はホテルのスタッフに「お願いしますね」と言うと、克明さんと一緒に来賓の方々がいる部屋へと向かった。
「ふふっ」
つい、この後のことを思い描いて笑みがこぼれてしまう。
「茉莉、気持ちは分かるがもう少し堪えようか」
「ああ、そうね。ごめんなさい」
克明さんに窘められて表情を引き締めると、来賓の方がいる部屋へと入ったのでした。
部屋に入ると、克明さんが皆様に挨拶をした。
「皆様、本日はお忙しい中、我が社の創立50周年記念祭にご出席いただきまして、ありがとうございます」
「克明君、おめでとう。君がこの会を取り仕切ったと聞いたぞ」
「いえ、私の前に準備を進めてくださった方がおります。その方より引き継いだだけに過ぎません」
「いやいや。これだけの会を開催するのには、苦労もあっただろう」
などなど、来賓の方々に言われて……というよりも揶揄われ……遊ば……ゴホン。親しく声を掛けられる克明さんのそばで、私はおとなしく微笑んでいたのでした。




