164 祖父からの呼び出し
日曜日の朝です。昨日……いいえ昨夜、祖父からの伝言を伝えられたので、克明さんと実家へ向かっています。もちろん車で。
えー、そうなんですよ。実は実家に行くのには車で行ったほうが近いのです。電車だと乗り継いでぐるりと回らなくてはならなかったんですね。
大学の時には一度レンタカーを借りて帰ってみました。が、金額がねえ。数日実家にいるのなら、電車のほうが安上がりでした。
えーと、それから、昨夜は……あのあとは、何も……何も、ありませんでした。水を差されたのでね、克明さんは自分の部屋へと戻りましたとも。
ちっくせう。私の覚悟を返せ~。おじいさんのバカ~。
眼が早く覚めてしまったので、早々に出発しました。10時30分前に祖父の家へと着きました。もちろん、向こうを出たところと、ここに着く30分前には連絡を入れておきましたよ。
「こんにちは、茉莉です」
玄関で声を掛けました。呼び鈴? そんなものは無視です、無視!
「まあまあ、早く着いたのね、茉莉ちゃん。おかえりなさい」
叔母さんが玄関へと迎えに出てきてくれました。
「初めまして。滝浪克明といいます。茉莉さんとお付き合いをさせていただいております」
克明さんが叔母さんへ挨拶をしました。
「遠いところをようこそ。ええ、聞いていますよ。さあ、どうぞおあがりになってください」
叔母に案内されて床の間の部屋へ。そこには……何故か私を呼び出した母方の祖父だけでなく、父方の祖父母まで顔を揃えていたのです。もちろん、伯父、叔父、いとこたちも。
あまりの仰々しさに部屋へ入るのを躊躇ってしまいました。そっと、背中に触れた克明さんの手に促されるように、部屋の中へと入ったのよ。
祖父の前、座卓を挟んだところに座布団が用意されていた。そこへ座れということだろう。
……けど、申し合わせたわけではないけど、座布団の後ろに私も克明さんも座った。
「お初にお眼に掛かり」
「遅い!」
ます、と続けて挨拶をしようとした克明さんの言葉を、祖父の一言が遮ったのでした。




