表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

202/216

162 思いが通じる時…… ーキスの雨ー

 克明さんの服を掴む手を、彼の手が包むように触れた。震えているのがわかってしまった。


「いいのか、本当に」

「克明さんが、いいの」


 彼の腕が腰に回されて引き寄せられた。体がぴったり密着した。左手が頬に添えられた。愛おしそうに撫でられる。


「後悔しないか」

「しないわ」


 それだけじゃ、言い足りないと思って、もう一言付け加える。


「手取り足取り腰取りで、教えてくれるんでしょ」


 克明さんはフッと口元に笑みを浮かべると「期待していろ」と言って、唇を合わせてきた。


 最初は軽い触れるだけのキス。唇だけでなく頬や額、瞼など、顔中いたるところにキスの雨が降ってくる。目を閉じた私はくすぐったく思いながら、彼のキスを受けいれた。


 また唇に戻って……今度は啄むようなキス。角度を変えて何度も繰り返しキスをされて吐息が漏れた。その隙を逃さないとばかりに、彼の舌が侵入してきた。口内を味わうように動く舌に翻弄される。


 だんだんと深くなるキスに頭は霞がかかったよう。


「茉莉、かわいい」


 唇が離れて耳元で囁かれた。彼の首に腕を回したら、抱きあげられた。ベッドまでは数歩。


 優しく壊れ物を扱うかのように、ベッドに下ろされた。私の上に覆いかぶさるようにしてきた克明さんと見つめあう。


 右手で頬に触れて、顔にかかった髪を払いのけてくれた。


 もう一度キスをしてほしい。


 両手をあげて彼の頭へと手を伸ばす。後頭部を抱きしめるように引き寄せた。唇が重なる寸前……。


 ピロリロリ~ン ピッピッロ ピッピッロ ピロピロロ~ン


 軽快な電子音が聞こえてきた。


 ビクリとなって、動きを止めた私達。思わず顔を見合わせた。しばらく動けずにいたら数十秒後に電子音は止まった。


「茉莉」


 問いかけるような彼の声に、グイっと腕に力を入れて彼を引き寄せた。唇が重なり、先ほどの続きを……と、思ったのに、また電子音が聞こえてきた。


 ピロリロリ~ン ピッピッロ ピッピッロ ピロピロロ~ン

 ピロリロリ~ン ピッピッロ ピッピッロ ピロピロロ~ン


 数十秒後にまた音は止まった。克明さんは私の顔の横に肘をついて、音の発生源を睨むように見つめている。


 ピロリロリ~ン ピッピッロ 


 また鳴り出した携帯に、克明さんは私の上から起き上がった。私も渋々起き上がり携帯のほうへと行った。


 うん。わかっているのよ。こんだけ続けてかけて来るのだから。緊急の要件だろう。


 それでも、せっかくの覚悟を邪魔されたと、恨みがましい視線を携帯電話へと向けたのだった


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ