152 普通とは程遠い……かな?
普通とは程遠い状態で映画を見終わりました。そして私が思い描いた、ランチを食べながら映画の内容を語り合う……。たしかに二人でランチを食べているし、映画のことを話しているけど何かが違う……。
そう場所がね。私は映画館のそばの喫茶店やカジュアルなお店を思い描いていましたとも。それが映画館をでたらハイヤーが待っていた。……タクシーではなくてハイヤーですか。
そして向かった先はホテルの中の西洋料理店。……あれ? ドレスコードがいる店ですか? 違う?
個室に案内されました。そして案の定、御大からのご好意と来た。
料理はおいしくいただきましたけど……何かがち・が・う!
あまり会話は弾まず、デザートをアイスコーヒーと共に食していると、ボーイの方がお盆に何かを持って近づいてきた。どうやらメッセージカードみたい。富永氏は受け取って一瞥すると、私にカードを渡してきた。私も受け取ってメッセージを読んだのよ。
『お詫びはここまでだ。
あとは二人のプラン通りにするがよい』
内容にホッと息を吐き出しました。富永氏と顔を見合わせて、お互いに苦笑を浮かべました。
「このあとはどうしたい。茉莉のしたいことをしよう」
「う~ん。それなんですけど、なんか思ったのと違う形になってしまって……その……」
と、言い淀んでしまった。本音を言わせてもらうと、普通のデートからかけ離れ過ぎて、疲れてしまったのよね。出来ることなら家でゆっくりと休みたい。
でもまだ帰るには早い時間よね。映画を見終わったのが13時頃。そして移動して食事が終わった今の時間は15時過ぎくらいだから。
でも、そんな私の気持ちは富永氏にはお見通しみたいだった。労わるように見つめてくると共に言われましたもの。
「やはり疲れたよな。普通のデートにならなくなってしまったし。普通のデートはもう一度リベンジするとして、今日は帰ってゆっくりしようか」
「えーと、でもいいの? このあとお店を予約してあるんじゃないの?」
そう。今日のデートはディナーを彼が任せてくれと言っていたから、どこかのお店を予約しているのだと思う。そこを今からキャンセルさせるのは、すごく申しわけないと思ったの。
「そのことは気にするな。御大の話を聞いたあと、どうなってもいいようにお店には話してあるんだ」