18 富永氏は怒っているらしい
私とのやり取りを吟味してから、何故か鋭い視線を私に向ける富永氏。
「で、なんでお前は好きでもない奴の誘いを受けたんだ」
「えーと」と私はかゆくもない頬を指でかじる仕草をしながら、富永氏から視線を逸らした。
「初めて告白されたから、舞い上がってしまった……みたいな?」
「みたいなじゃ、ないだろう! 賭けで誘うような男に引っかかるな!」
思いっきり至近距離で怒鳴られました。……というか、なんで富永氏が怒っているのだろう?
「あのですね」
「なんだ」
恐る恐る口を開いたら、ギロッと睨まれた。一瞬怯みかけたけど、ここで怖気づいたら話は進まないと思い直す。
「なんで富永氏が怒るんですか?」
「お前は馬鹿にされて黙っていられる人間なのか!」
……ん?
「お前はな、親父たちに認められるくらいすごい奴なんだぞ」
「はあ~」
「はあ~、じゃない! この2週間、一緒に仕事をして、やりやすいしフォローは完璧だし、地味なところ以外は悪いところなんてないんだぞ、お前は。仕事の時は無表情でザ・クールを地でいくから近寄りがたいけど、素ではかわいく頬を染めるは、『はえっ』なんてかわいいこというわ、ギャップが在りすぎなんだよ。さっきのバーで何人落としたと思っているんだ。そんなかわいいやつにゲスなことを仕掛けてんだぞ。これが怒らずにいられるか!」
……えーと、ところどころ支離滅裂列なことを言っているけど、要約すると私の仕事ぶりに満足していて、上の人達にも認められている私が、馬鹿にされたことが許せないのね。
「えー、よく分かりませんが、私のために怒ってくださってありがとうございます。ですが、この事は私のプライベートなことなので、どうか忘れてください」
そう答えたら、富永氏に睨みつけられてしまった。何故に?




