147 デートのお誘い
「えーと、今週末の予定ですか?」
おはようございます。昨日に懸念案件が片付いて、やっと肩の荷が下りた気分の木曜日です。いつもの通りまずは本部長室で、本日のスケジュールの確認をしています。本日は朝、2課に顔を出した後は本部長としての仕事をする日となっています。
そんな状態の私に、いつもの壁ドンで挨拶をしてきた富永氏が、週末の予定を聞いてきたのです。
「そうだ。もし予定がなければ、一緒に出掛けないか」
思わず、パチパチと瞬きを繰り返しました。今までにこちらの都合を聞いてきたことはなかったのに……と、思っちゃいましたよ。いや、あれはレッスンのためなので仕方がなかったわけで……。
まあ、予定があると言えば、そちらを優先はしてくれたのでしょうけど……。
うん。予定といったって鈴音と会うぐらいで、他の人とは秋まで会う予定はなかったし……。
あっ、なんか落ち込むなー。これじゃあ私って、寂しい女だったみたいじゃない。
一瞬思考が逸れました。覗き込むように見てくる富永氏が、なんか期待の目をしています。言葉を返そうとして……ハタッと気がつきました。
「デートなのですよね」
「それ以外のなんだと思うんだ」
呆れたように返されました。
「だっ……て、レッスンじゃない本当のデートって、初めて……だから」
視線を逸らしながら小さな声で言ったら、富永氏が息をのむのがわかりました。富永氏のほうへ視線を戻そうとしたら、私の後頭部に手を当てて富永氏の胸にもたれかかるようにされ、ふわりと抱きしめられました。
「ほんと、茉莉はかわいすぎる」
囁くように言われましたけど、続けて「俺の理性はいつまで持つかな」とか「週末に放せなくなったらどうしよう」とか、なんか不穏な含みを持った言葉が続いたのだけど?
……あっ!
言葉の意味に見当がついた私は、じわじわと顔に熱が集まってくるのを感じて、しがみつくように富永氏の胸に顔を埋めたのでした。




