17 確認……って、何の?
「あいつらの話に出てきたのは、もしかしなくても大石か?」
問いに答えられずにマグカップを握りしめたら、富永氏は「ふう~」と息を吐き出した。
「やっぱりそうか。飲むペースが速いから、そんな気がしたんだが」
そう言って、また「ふう~」と息を吐き出した。
「そんなに好きだったのか」
「はっ?」
思わず間の抜けた声が出た。好きって、誰が、誰を?
「ショックを受けたのはわかるが、ああいう飲み方はよくないぞ。酔いつぶれたのを良いことに、不埒な真似をしようなんて考える奴はいっぱいいるんだからな」
それから、何故か富永氏の説教が始まった。それを半分聞き流しながら、私は恋人だと思っていた男のことを考えた。
「……じゃない」
「ん? なにがだ」
漏れた呟きに、富永氏がすぐに言葉を返してきた。
「だから、ぜんぜん好きじゃなかったんです」
「はっ? ……おい、確認だが、付き合っていたんだろ。あいつと」
富永氏は困惑したように聞いてきた。
「どうなんでしょうね」
「ちょっと待て。じゃあ何か、お前は好きでもない奴と付き合っていたのか」
「う~ん、よく考えるとそうなりますね」
額に手を当てて、混乱した様子の富永氏。
「あんなゲスに食われてなくてよかったと思ったけど、なんなんだそりゃ。おかしいだろ、お前」
「そう言われたって仕方がないじゃないですか。私は今まで男の人と、お付き合いをしたことなんてなかったから、あれが普通だと思ったんですから」
私の言葉になぜか口を大きく開けてから、頭を抱えて悩みだす富永氏。
「あー、まてまて。もう一度確認だ。あいつと付き合っていたのはどれくらいだ」
「もうすぐ4カ月です」
「告白はどっちからだ」
「彼からです」
「えーとどういった付き合いだったんだ。そのデートの様子とか」
「デートは会社帰りに食事を4回しただけですね」
「はあ? 休日は? どこかに二人で出掛けるとか」
「そういうことは一度もなかったです」