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139 ……というわけで、富永氏が悪い

 荒木さんには娘しかいなかったので、あまり知られていなかったみたいです。たまたま入社試験の面接官が荒木さんを知っている人だったので、奥志田さんが似ていると気がついたそう。面接後に奥志田さんを呼び止めて話をしたことで、その方がいろいろと便宜を図った……ようです。


 この3年の間にその方は定年を迎えて退職をされていた。


 奥志田さんは異動させた女性のことを、4年をかけて正攻法で落とした……という言い方では失礼かな? でも、頼れるところを見せつけて好意を得たというのよね。人事課長が戻ってきた時には、婚約を済ませていたそう。半年後には挙式をして、今は幸せ一杯……なのかな?


 戻ってきた人事課長は、異動について調べ直しました。岸本君、永井君、吉田君、上矢君、高杉君のことは、岸本君以外は父親が同じ会社にいることは有名でした。岸本君のことは、たまたま町田さんが本社に出張で来た時に岸本君を見かけて驚き、それを一緒に居て訝しんだ秘書室長が言葉巧みに聞き出したとか。「離婚して妻の元にいる息子だ」と、言ったそうです。


 元人事課の女性の証言の裏取りに半年をかけ、あとは2課の女性たちの証言を得て処罰に値するかどうかの判断を、という状態になりました。その証言を聞き出す算段も出来上がったので、富永氏に戻ってきてもらうことになりました。


 でも、富永氏は前年から再三帰国の要請があったのに、突っぱねましたよね。社長は「外を見てくるのはこれからのためにいいことだと思う。だが、5年もあれば十分だろう」と、言っていたんですよ。それでも帰って来ませんでしたよね。


 業を煮やした副社長が事情説明をしにそちらに行きましたのに、話を聞かなかったと聞いています。社長の言葉を聞いて帰国してくれていれば、今回のことに爪弾きにすることなくすんだんです。つまり、富永氏が悪いんです!



 私の最後の言葉にバツが悪そうな顔をした富永氏。でも、すぐに何かに気がついた顔をしました。


「副社長が来た時に話を聞かなかったと言ったが、そもそもそんな話は一言も聞かされていないぞ」


 私は呆れた視線を富永氏に向けた。


「よく思い出してください。あの時はタイミングが悪くて、岸本さんが出張でそちらに行っていましたよね。それも富永氏が指名をして来させたと聞いていますけど。そんな状態で岸本さんの不正の話が出来ると思いますか?」


 グッと息を詰まらせて、富永氏は黙ったのでした。


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