132 説明は……丸投げかよ!
戸塚部長の言葉にぎょっとして、部長の顔を凝視した。富永氏も一瞬目を見開いてから、不快そうに眉をしかめた。
「逃げるんですか、戸塚さん」
「いや、そうではないんだ。私よりも大石さんのほうが、今回のことは詳しいから、な!」
……確かにそうだけど、でもこの場合は私よりも上役の人が説明するべきでしょう。
「大石さんは不服そうですけど」
富永氏、はっきり言わないでくれます? 不満があると態度に出している自覚はあるけど、まだ口ではなんにも言ってないんだからさ。
「大石さんの気持ちはわかるけど、社長と筆頭秘書からの指名でね。『茉莉さん、自分のしたいようにして。こちらの都合を考えない我がまま坊やに、説明をよろしく。ついでに不満をぶつけてくれると尚良し!』という、伝言も預かっているからね」
「グッ」
文句を言おうとして……変な声が出てしまった。仕方がない。説明は私がするしかないのか。
肩を落とすとともに、はあ~とため息を吐き出した。
「わかりました。あちらのことはお任せしてよろしいのですね」
「もちろんだとも。それぞれ、親御さんがきっちりシメると言ってくれていたからな。会社としての処分もちゃんと伝えておく」
「それでしたら、こちらの方は引き受けます。……あっ、社長と副社長と凛香さんに、貸し三つですと言っておいてくださいね」
「貸しは一つじゃないのかい」
私の言葉に戸塚部長は苦笑いを浮かべて言った。私はとびっきりの笑顔を向けました。
「もちろん一つのわけないじゃないですか。私が何年社長秘書をしていたと思います?」
そう言ったら戸塚部長の顔色が悪くなった。……私の言葉に、というより笑顔に顔色を悪くするってどうなのよ!
このあと、きっちり社長たちへの伝言を頼んで、私と富永氏は部屋を出たのでした。