131 ということで天誅……じゃなくて親からの説教を受けてくださいね
私が声を掛けたので扉が開いた。そこから年配の男性が数人、顔を見せた。……だけでなく、女性も数人男性に続いて姿を見せた。
「この、馬鹿息子が! 勝手に人事異動をさせるなどとは、心得違いもいいところだろう!」
ツカツカと靴音を鳴らして岸本君のところに歩いて行った方が、町田ヨーロッパ統括部長なのでしょう。他の男性方もそれぞれの子息のほうへと歩いて行かれた。女性方は母親なのでしょうね。事務職の女性のほうへと来て、挨拶&謝罪をしているもの。
後ろの方にいる五人は、目を丸くして見ているけど、すぐに狼狽えて視線が泳ぎ出した。その視線が私を捉えると縋るような目で見てきた。私は最後に入ってきた戸塚部長に軽く目礼をしてから「関係がない人は2課に戻っていいですか」と聞いた。
「ああ、そうだな。西岡、お前たちは戻っていてくれ。今日の午前は緊急な案件がない限り、外出はなしな」
「「「「「はい、わかりました!」」」」」
五人は返事をすると、ささっと部屋から出て行った。
残った私と富永氏は戸塚部長にこいこいと手招きをされて、隣の部屋へと移動した。部屋を出る前に、縋るような目を女性たちに向けられたけど、気づかなかったふりで部屋を出た。
そう、これは大事なことだ。今後のいろいろなことに関わってくるのだから、きっちり話し合いは済ませてほしいと思う。
うん。部屋を出る時に『ゴン』とか『バキッ』とか聞こえてきたけど、気にしちゃいけないよね。……というか、もっと早くに躾はしておいてほしかったと思います。
隣の部屋の中に入ったところで、戸塚部長に言われました。
「大石さん、ご苦労様だったね」
「本当に疲れましたよ。でも、三か月を目一杯引っ張らなくてよかったです」
渋面で返事をしたら、部長の頬がひくついた。それでも笑みを口元に浮かべて、言葉を返そうと口を開いたのに、先に富永氏が文句を言いだしました。
「いい加減、説明をしてくれませんか、戸塚部長。俺に黙って進めていたのは、俺に首を突っ込まれたくなかったからなんですよね」
低い声と射殺しそうな眼に、別の意味で頬を引くつかせる戸塚部長。
「もちろん、説明はするとも。大石さんがな」
と、答えましたよ。
……って、おい!