表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

163/216

128 私に指示を出した人は……

 岸本君たちは一瞬たじろいだけど、私から視線を逸らそうとはしなかった。それどころか、睨むように私のことを見てきた。


 ……いや、睨むようにではなくて、本当に睨んでいるのだろうなー、これは。


「その前にちょっといいかな」


 岸本君が気持ちを立て直したのか、いつもの飄々とした感じに口を開いた。私は「なんでしょうか」と、口元に軽く笑みを浮かべて返事をした。


「なんで大石さんが摘発をする(・・・・・)のかな、と思ってね。大石さんは富永課長……いや、富永本部長の秘書でしょう。俺たちを裁く権利はないんじゃないかと思ってさ」


 そう来たかと心の中で思ったけど、そんなことはおくびにも出さずに、私は殊更ニッコリと最大限の笑顔を浮かべてから言った。


「もちろん今回の件を、一任されているからですよ」


 そして指を見えるように折りながら私に指示を出した人の名前を挙げていく。


「人事課長、秘書室長、監査部長、常務、専務。それから各支社長(・・・・)に、副社長、社長からですね。こちらがその指示書です」


 手元に用意しておいたファイルから、最初に渡された資料に挟まれていた指示書を取り出して、皆に見えるように掲げて見せた。私に一番近い席に座る岸本君が、指示書の署名欄を見て顔色を蒼褪めさせる。


 それを見て、一瞬部屋の空気が揺れた。後ろにいる五人と、向かいに座っている女性たち、岸本君以外の四人も、私が言った通りなのだと悟り、それぞれが顔色を変えていった。


「ということですので、この後文句を言うのであれば、社長にお願いしますね」


 私は口元はニッコリと、でも、笑っていない目で五人のことを見つめたのでした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ