15 どうやら試されていたらしい
「ありえねえ。最初の時から反応がないから、クールなだけだと思っていたのに。知らなかっただけだなんて」
富永氏の呟きに憮然とした。
「悪かったですね。知らなくて」
「でもな、普通こんな至近距離で迫られたら、ドキッとかするもんだろ」
なんか理不尽ないいようだ。
「するわけないじゃないですか。一応彼氏がいるのに……あっ」
言い返したものの、先ほどのバーで聞いた会話を思い出してしまい、私は息を飲みこむように言葉を詰まられた。
富永氏は立ちあがるとそっと私の肩に手を添えて、ソファーへと誘った。おとなしく座ると「コーヒーでも飲むか」と聞いてきた。私も「はい」とだけ答えて、俯いて座っていた。
暫くするとカウンターキッチンからお湯が沸いた音や、何やらしている音が聞こえてきた。どうやらちゃんとドリップしたコーヒーを用意してくれているみたいだ。
「大石、砂糖やミルクはどうする」
「今はブラックの気分です」
普段はミルクや砂糖を入れて飲むこともあると、匂わせておく。
マグカップを渡されて……コーヒーカップでない事が、らしいなと思ってしまった。
「そういや、もう大丈夫みたいだな。本当に強いな」
「言ったじゃないですか。30分もすれば大丈夫になるって」
「実際は1時間以上かかったけどな」
……それについては、スルーしてくれたっていいじゃないか。
「口に出しているぞ、それ」
「聞こえるように言いました」
ムッと言い返したら、また何かツボったらしくって富永氏は「クックッ」と笑いだした。
「ところで、一応謝った方がいいか?」
笑いの衝動が収まったらしく、富永氏に聞かれた。
「何をです? この2週間、私を試していたことですか」
そう答えたら「やはり気がついていたのか」と、のたまいやがりましたよ。




