124 さて、お土産を渡したら……
休んでいた間の引継ぎが終わり、小暮さんは先に2課に向かった。私は富永氏と共に、本日のスケジュールを確認してから、本部長室を後にした。
エレベーターに乗り……一度地階に行ってから階段で外に出て、正面から本社の中へと入り直し、エレベーターに乗り直した。
……はあー。このあとやんなきゃならないんだよなー。めんどく……じゃなくて、私より上の方の役目だと思うのだけど……。いやいや、尻尾はつかんだから、あとは逃げられないように一気に叩き潰す……じゃなくて、現実を教えて……。
などと、心の中でこの後の段取りを考えていた。けど、すぐに思考を切り替える。やらなければいけないことなんだから、やるしかない。
「おはようございます。皆さん、お休みをいただいてしまい、申し訳ありませんでした」
2課のフロアに入ると共に、声をかけた。もう、2課のみんなは出勤していた。今日は朝から外回りに出ている人はいないみたい。
「おはようございます、大石さん」
「ゆっくり休めました~?」
「課長にこき使われているんですから、休みはしっかり取るべきですよ」
軽い感じに男性たちから声がかかった。女性たちからは……縋るような目を向けられた。……いかん。ため息を吐きそうになった。
口元に笑みを浮かべて、手に持った紙袋を持ち上げた。
「これ、うちのところのお勧め銘菓です。甘いのがお好きな人には、たまらない味だと思います。是非、渋いお茶か砂糖を入れないコーヒーと共に、ご賞味くださいね」
「なんだそれ~。そんな凶悪なものをお土産にしたの?」
「大石さんのセンスを疑うなー」
「そういうけど、美味しいですよ。昔は甘味が貴重だったでしょう。だから甘いほど高級品だった名残りみたいだそうです」
代表するように岸本君が紙袋を受け取ってくれた。それから、私は殊更にっこりと笑いながら言った。
「それでは、私が休んでいた間のあれこれについてお話したいと思いますが、その前に皆さんの仕事を確認したいと思います。30分お待ちくださいね」
『はっ?』
数人が戸惑いの声をあげていた。それを私は無視するように自分の席に行き、パソコンを起動させた。視線が集中しているのはわかるけど、そんなことに構っている暇はなかった。