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122 さあ、仕事モードに……って、予想通りかよ

 カチャリと音がしてドアが開いた。


「おはようございます。富永本部長」

「おはよう、茉莉」


 秘書らしく頭を下げて富永氏のことを迎えたら、軽い挨拶が帰ってきて……じゃなくて、顔をあげた私に近づいた富永氏に抱きすくめられてキスをされました。


 こうなることを想定していた私は……富永氏が唇を話したところで、後ろ手に持っていたものを彼の顔へと向けました。


 ピュー


「……何をするんだ、茉莉」


 スポイトに入った水を掛けられた富永氏は、一瞬呆けた後、私のことを睨んできました。私も負けじと睨み返します。


「何をするんだは、こちらのセリフです。ここは仕事をする場所です。それがわかっていないのでしたら、お付き合いはお断りさせていただきます」


 断固とした決意をもって言った私を、少し睨むように見ていた富永氏は、息を吐き出して肩の力を抜くようにしてから、「悪かった。これからは気を付ける」と言いました。なので「そうしてくださいね」と念押しをしながら、用意していたタオルを渡しました。


 えーと、休み明けの水曜の朝です。8月の上旬です。休んでいる間に8月になっていましたね。そして9月までは約ひと月あるんですよ。そう、予定の三か月まであとひと月半……。そこまでかかると思ったのに。……いや、これについては、逆に早く決着がつくことになってよかったと思うことにしよう。……うん。修羅場にならないことを祈っておくしかないか。


 コホン。さて、私が予測したとおりに富永氏から、朝から甘い挨拶をされてしまいました。なので、私はあらかじめ用意しておいたスポイトを彼の顔へと向けて、ピューとかけたのです。これね、いろいろ考えたんですよ。最初はコップに水を入れて用意しておこうかと思ったの。でも、コップに水をどれくらい入れるか考えて……却下したのよね。さすがにコップ一杯の水をかけたら、シャツどころかズボンまで濡れてしまうかもしれないでしょう。それはちょっとねえ。いろいろ考えた結果、スポイトなら顔を濡らすくらいで済むだろうし、万が一シャツにかかっても、すぐに乾くわよね。ということで、スポイトを採用したのよ。


 えっ? 恋人に対してひどいって?


 わたくし、公私はちゃんと分けたい性格をしております。流されてなし崩しは嫌ですわ。そのことを行動で示しただけですけど、何か問題がありまして?


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