120 責任の取り方が間違っている気がする……
「クックックッ」
堪えきれない笑い声が向かいに座った富永氏から漏れてくる。なんとか笑わないでいようと思っているようだけど、私の顔を見ては「クックッ」と笑うのだ。
先ほど、悲鳴を上げてしゃがみこんだ私に「向こうにいるから」と言って、富永氏は部屋を出て行ったのよ。私はバスローブの紐を結び直してから、部屋の中を見回した。……もちろんというか、私の着替えは富永氏の部屋の中にはなかった。
慌てて富永氏の部屋を出て、洗面所に置いてあった着替えを回収して、客間へと飛び込んだ。
みられた……みられたよね。……というかそれ以前に、昨夜浴室で倒れた私を富永氏が助けてくれたわけで……。その時のほうがばっちり見られている可能性が高いわけで……。
よくよく考えなくても、富永氏が下着を身に着けてなかったのは、私を助けてくれた時に泡だらけになったからだろう。それで下着まで脱いでバスローブを羽織っていたのだろう。……で、考えたくないけど、私がまた富永氏を捉まえて動けない状態にしてしまった……と。
「あ~、もうお嫁にいけない」
「安心しろ。俺がもらってやるから」
廊下から聞こえてきた声に、部屋のドアをちゃんと閉めていなかったのかと慌てて閉めて、ついでに鍵までかけた私でした。
急いで着替えてキッチンへと行ったら、富永氏が冷蔵庫から卵を取り出すところだった。
「私がやります」
と、なかば奪うようにしてベーコンエッグを作った。その間に富永氏はパンを取り出してトースターで焼いていた。
で、コーヒーと共に朝食を向かい合って食べたのだけど、「お嫁にいけない」発言について訊かれて……昨夜の私が倒れていた状況などを聞き、想像通りのことを言われて頭を抱えてしまったら、何をツボったのか笑われてしまったのでした。
「まあ、安心しろよ。責任はバッチリとるからな」
「責任って言わないでください!」
「それじゃあ、あれだ。妹さんの望みを叶えるようにしよう」
「なんで莉花が出てくるんですか!」
「十代で叔母さんになりたかったんだろ。茉莉と12歳違うのなら、18歳だよな。来年のうちに子供を産めば、彼女の望みは叶うだろう」
「だからって、この手はなんですか。なんでソファーに移動するのよ!」
「どうせなら今から励むのもいいかなと思って」
「よくないですから。仕事に行ってください! 押し倒そうとするなー!」
散々私のことを揶揄ってから、富永氏は仕事へと出かけて行ったのでした。