119 朝、起きて…… -朝のキスー
人が動く気配を感じて意識が浮上してきた。うっすらと目を開けた私は、人影が動いているのを見つめた。ベッドに横になっている状態で、ぼんやりと見ていたら……。
えーと、あれは富永氏よね。着替えをしようとしているのはわかるのだけど、なんでバスローブを脱いだ下は何も身に着けていなかったのかしら?
疑問に思いながら手を動かして自分の胸元を触ってみた。なめらかな手触りの……何かを身に着けているようだ。裸でないことにほっとしながら、昨夜のことを思い出そうとしてみる。
……あー、やっちゃったのか。
思い出したことに頭を抱えたくなったけど、自分も起きて仕事に行く支度をしようとおもい、体を起こした。
「茉莉、起きたのか」
目ざとく見つけた富永氏は、羽織ったシャツのボタンを留めながらそばに来た。
「おはようございます、富永さん」
「おはよう、茉莉」
顔が近づいたと思ったら軽く唇にキスを落として、すぐに離れた。
「茉莉は今日まで休みなのだから、もう少し寝ていていいぞ」
「いえ、私も仕事に行きます」
ベッドから抜け出しながらそう答えた。
「駄目だ。昨日のあの状態じゃ、許可しない」
少し強硬に言われてしまい、私はムッとした。
「何様ですか。もう、休む必要がないので、仕事に行きます」
「本当に強情だな、茉莉は。いうことが聞けないのなら、動けないようにするまでだな」
不穏な言葉にキッと睨んだら、肩を押されてベッドへと倒れこんだ。慌てて起き上がると、富永氏が手を伸ばしてきて、目の下に触れた。
「まだ完全に隈は取れてないぞ。今日もゆっくり休むんだ」
私のことを案じる眼差しに、何も言えなくなる。昨夜は安心してぐっすりと眠れたけど、まだ睡眠不足による怠さは改善されていない。不承不承だけど頷いたら、富永氏の顔がもう一度近づいてキスをされた。
恥ずかしくて俯いてしまったら軽く頬を撫でるように触って、富永氏は離れて部屋を出て行こうとした。
私はハッとして立ち上がった。
「富永さん、朝食は一緒に……キャー」
立ち上がったひょうしにバスローブの紐が解け、ハラリとはだけてしまった。……下着を身に着けてないことに気づいた私は、悲鳴を上げてしゃがみこんだのでした。