115 妹の気持ち
『私の夢
大石 莉花
わたしには年の離れた姉と兄がいます。十二歳年上のお姉ちゃんと、八歳上のお兄ちゃんです。お姉ちゃんは私が小学校に入学した年に、大学に行くために家を出ていってしまいました。今年、大学を卒業したので、家に戻ってきてくれるのかと思ったのに、しゅうしょくを家から離れたところにしたので、戻ってきてくれませんでした。
それに、今年から八歳上のお兄ちゃんも大学に通うために家を出て行ってしまいました。すごく寂しいです。
でも、今は別の楽しみを見つけました。それはわたしが、お姉ちゃんやお兄ちゃんのところに、遊びに行くことです。そうすれば、お姉ちゃんとお兄ちゃんに会えるから。
そして、わたしはお姉ちゃんの恋のキューピットをするの。お姉ちゃんが早く結婚してくれれば、わたしはブライダルメイドになれるのよ。バージンロードを歩くお姉ちゃんのベールをもって歩きたいから、絶対に教会で結婚式をしてもらうの。
あと、お姉ちゃんが早く赤ちゃんを産んでくれれば、お姉ちゃんの赤ちゃんとわたしが、姉妹みたいに思われるのじゃないかと思ったのよ。十代でおばさんってすごいよね。
だからわたしの夢をかなえるためにも、お姉ちゃんには早くいい人をみつけて幸せになってほしいと思います。』
読み終わったのか、富永氏が顔をあげて私のことを見てきた。私はもう一度苦笑を浮かべた。
「妹が……いいえ家族が、今の私の様子を知ったら、後ろ向きすぎると怒られてしまいますね」
私は笑みを消して富永氏のことを見つめた。決意を込めて言葉を口にする。
妹のこの作文を見つけてから、私が考えたことを。
「これからは前向きに考えて生きていこうと思います」
しばらく沈黙が流れた後、「それで」と富永氏は言ったのでした。
補足というか。
妹の莉花の書いた作文のブライダルメイドは、間違いで書いた言葉ではないです。単純に莉花の勘違いです。
ブライズメイドという言葉を、ブライダルメイドと聞き間違えていたのと、外国の結婚式で花嫁のベールをもつ可愛らしい子供の姿を見て憧れていたのです。
それで、勘違いから思い込んでしまいました。
こういうことってありますよね。