112 いとこは……恋愛対象外
苦笑いを浮かべたまま、私は続けた。
「あっ、実際はツケは払っていませんよ。でも、いとこにプロポーズをさせることになったので、猛省はしましたけど」
「はっ? プロポーズ!」
ガタッと勢いよく立ち上がった富永氏。私の隣に来て険しい顔で肩を掴んで聞いてきました。
「どういうことだ? 実家に帰って里心がついて、向こうに戻る気になったのか。そのいとこからのプロポーズを受けるから、俺とは付き合えないというのか」
「だから、違いますって。いとこに気遣いでプロポーズをさせたと、猛省したと言いましたよね、私。それに、私はいとこは無理です。宮君じゃあるまいし」
富永氏の腕に手をかけながら、私は憤慨したように言いました。私の勢いに押されたかのように、富永氏は私の隣の椅子に座りました。
「えっ? 宮下君? なんで?」
小声で首を捻る様にして言っているけど、誤解を解くために……というか、先にいったじゃない。長い話になるって。一応順番というか、休みの間にあったことを順に話していくと、こうなっただけなんだから。で、なんで宮君の名前を出したのかは、説明した方がいいか。
「あのですね、いとこって私より8歳下なんです。生まれたときから知っている相手を、恋愛対象には見れませんから」
「……じゃあ、なんで宮下君の名前を?」
「先ほども言いましたけど、宮君を引き合いに出したのは、状況が似ているところがあるからです。宮君の婚約者は生まれたときから婚約者候補でしたから、宮君は彼女が赤ちゃんの時から知っています。なので、彼女が小学生のころは婚約者候補と言われても、恋愛対象とは見ていなかったと言っていました。でも、家族同然に付き合っていて、彼女のひたむきな気持ちに見方が変わっていったと言いました。……それを聞いて私がいとこのことを恋愛対象に見られない理由がはっきりしたのですけどね」
「見られない理由?」
「はい。私にとっていとこは弟と同じです。弟とは恋愛は出来ないですもの。宮君たちみたいに全然血縁関係がないのでしたら、そういう対象になったかもしれないですがね」
私の言葉に「なるのか」と、驚愕の表情を浮かべる富永氏。
「だから、なりませんから。年下と恋愛をするのなら、小さいころを知らない相手としたいです」