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111 ……ということで、本題に行きます

 富永氏は何とも言えない顔をして、私のことを見てきました。まあ、そろそろ横事の話は終わらせることにしましょう。


「もう一つ補足ですけど、鈴音はくにっちと宮君の噂を耳にしたことがあります。それもあって宮君は私のことを言うことで、鈴音の疑惑から逃れようとしたみたいでした。……もう一つ補足なんですけど、宮君はロリコンとかではないですからね。婚約者候補が何人かいて、決まったのが3年前になるそうです。今は大学をこっちにした婚約者と同居しています。なんか、『親父たちのせいで生殺しの毎日だ』と、ぼやいていました」

「それでは、茉莉が……その」

「家族を亡くした時ですか。まだ、婚約者候補だったと思います。でも、一番の有力候補ではあったそうなので、私の家族のことを聞いて、尚更同情というか親近感? かな? を、持ったみたいでしたね」


 一回り下の婚約者候補ってどうなんだろうと思うけど、二人の仲はもともと良かったらしくて(ただし、兄妹的なものだったようだけど)、私が妹を亡くした話を聞いて自分の身に置き換えてみて……なんか、逆に気をかけるようになったとか。それに歳が近かった婚約者候補たちが、次々に脱落していったことも……おっと。これ以上は言葉を濁されたのだから、考えないことにしましょう。


 さて、これで一通り話し終わったから、本題にいきましょうかね。


「ここまでで何か聞きたいことはありますか?」

「いや……とくにはないと思う」

「それじゃあ、横事はここまでにして、本題に行きますね」


 そう言ったら、富永氏は口を大きく開けた。


「ちょっと待て。横事ってなんだ? 今までの話は、全然関係ない話なのか?」

「そんなわけないじゃないですか。少しは関係ありますからね」

「少しかよ」


 いや、そこでぼそりと不機嫌そうに言わないでくれませんか。


「一応、私の中での整理のためにも必要だったことにしてください。えーと、それで、日曜日に法事がありまして、そこで両親の祖父母と会い、言われてしまったのですよ。『仕事を辞めて戻ってこないか』と」

「なっ!」


 富永氏は驚きに目を見開いてから、狼狽えて立ち上がりかけて、すぐに思い直したように座り直した。その彼に私は苦いものを含んだ笑みを向けた。


「心配をかけていたのはわかっていたのですけどね。何も言われないからそのままにしていて、祖母の口から言わせてしまいました。半分は誤解だったのに、でも好きに生きたいからとそのままにしていたツケを払うことになりました」


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