109 ゲイ……のことは向こうが本場だった……わね
私の説明に若干わからないところがあったみたいだけど、田中と愛花の関係性はわかってくれたようだ。……なので、次は宮君のことだね。
「宮君というのは本名は宮下といいます。彼とは同じサークルにいました。宮君と田中君は同じ学部でした。この宮君は、学生の時によく見ている人物がいたのです。もちろん私ではないですよ。だから私は宮君のことをそっちの気があると思っていたのですよ」
「そっちの気? ……まさか、ゲイ?」
富永氏の呟きとなんとなくさえない表情に、私は首を捻った。けど、すぐに「ああっ」と思い至った。富永氏は海外、それも戻ってくる前はカリフォルニアにいた。そういうお誘いをされたことがあるのかもしれない。
「そこを察するなよ」
とぼやく様に言われたけど、仕方がないじゃない。察してしまったんだもの。
「えーと、まあ、そこも置いておくとしましょうね。今は宮君の話ですから。それで、大学の時も、卒業してからみんなと会った時も、宮君から私へのアプローチは一度もなかったから、鈴音の言葉がおかしいと思って、愛花たちに確認してみたのです。そうしたら、宮君は会社でゲイ疑惑をばらされて微妙な立場になっていると言われました。それをどうにかしたいから、私と結婚を考えているんじゃないかとも、言ったのですよ」
「結婚!」
富永氏は慌てて口を押えましたけど、まあ、気持ちはわかるから。でも、ここで聞こうとはせずに、「続きを」と促してきたから、今の言葉はスルーしておきましょう。うん。
「これも腑に落ちなくて、結局本人に確認しました。そうしたら、守秘義務があるとか言ったけど、私に迷惑をかけたからと真相を教えてくれたんです」
聞きたいですか? と続けようとしたら、富永氏は変な顔をしている。
「どうかしましたか?」
「この話はどこに……いや、いい。茉莉の好きなように話してくれ」
……ははは。たしかにどこへ着地するかわからない話になっているよね。まあ、でも、もう少し付き合ってもらいましょう。
「それでですね、大学の時に宮君がよく見ていた相手というのが、富永氏もあったことがあるくにっちなんですよ。くにっちも宮君と同じ学部で、二人は全然性格が違うけど気が合っていると思っていて、くにっちは疑惑ありで周りから見られているとは思っていなかったんですね」