108 話はおかしな方向に転がっていく……
私がう~んと呻っていると、富永氏はおもむろに携帯を持って調べだした……ようだ。しばらくして何とも言えない視線を私に向けてきた。……よかった。意味は理解してくれたようね。
……じゃない!
「あのですね、誤解しないでほしいのですけど、私にはそう言った趣味はないですから。ただ、小さなころから活字中毒気味なところがあっただけなので、その『腐』に値する作品も読んだことがあるだけで、傾倒はしていないですからね」
私の言葉を、まだ怪しそうに見ている富永氏。言い訳だとでも思われたのかもしれないですね。……でも、それは些末なこと。なので、続きに行きましょう。
「まあ、ここはさらりと流してくださいよ。それで、実際は腐カップルの新郎新婦に、鈴音から聞いた大学の時の友人が私を好きらしい疑惑を、確認しただけなので」
「まてまて。何の話だ、それは!」
富永氏は顔を引きつらせて、私の言葉を遮って訊いてきた。
「何って、火曜日に鈴音と会ったと言いましたよね。その時に鈴音に『宮君が私のことを好きなんだ』と言われたんですよ。なんでも宮君がそう言っていたというけど、どう考えてもおかしいからそこいら辺を知っていそうな、田中君と愛花に聞いたんです。まあ、これも、宮君本人に確認したら、本当のところは違ったという話でしたけどね」
「いや、ちょっと待ってくれ。鈴音さんはわかるけど、田中君に愛花さん? あと、宮君の関係性がよくわからないんだが」
混乱した顔で富永氏が言ったのよ。……まあ、そうか。
「えーと、土曜日に結婚式を挙げたのが田中君と愛花で、この二人は高校の同級生です。ただ、高校の時には二人は付き合っていなかったし、腐に関する部分は隠していました。大学は愛花とは違ったのだけど近い大学だったので、大学の間は私と愛花は同じアパートに住んでいました。逆に田中君とは同じ大学を受験したことも知らなくて、キャンパスで偶然会って驚いた仲です。それで、愛花は小さな頃から絵を描くのが好きで、中学のころには漫画家になるのが夢だと言っていたそうです。それが何を間違ったのか、BL系の話を描くようになっちゃって、大学の時にコミケに参加するようになっていたんですね。そこで腐男子の田中君に絵を気に入られちゃって。その後、何やかや在って二人は付き合うようになり、結婚に至ったんです」
補足ではないのですが、『腐』で検索をしたところ『腐女子』が一番に出てきました(苦笑)
それだけ認知されているんですね。