閑話 彼女からのメッセージ
月曜日、2課に顔を出して、先週までとの雰囲気の違いに、あ然とした。いや、顔には出さないように気を付けたけど、……出していないとは思う。出してないよな。
事務の女性5人の表情は冴えないものだった。それに反して営業の男性たちは、すっきりとした顔で爽やかな笑みを浮かべていた。……なんとなく何があったのか察せられるが、別に相談を受けたわけではないことだし、触れることはしないでおくことにした。
今日は10時から本部長として出なければならない会議があった。なので、顔を出して後のことを岸本に頼み、すぐに2課から出て行った。
会議が昼の休憩になり昼食に出された弁当を食べていると、ポケットに入れていた携帯が震えたことに気がついた。取り出してメールが来たことを知り、誰からなのか確認する。
がたっ
俺は音を立てて椅子から立ち上がった。周りから視線が集中したけど、そんなことに構っていられなかった。
「すみません。少し席を外します」
本来なら休憩時間なのだから断る必要はなかったと思い至らずに、会議室を後にした。どこなら気兼ねなく連絡が出来るのかと思い、本部長室へと向かった。
部屋に入ると、もう一度メールを見直す。
ーーーーー
本日こちらに戻りました。
お話したいことがあるので、お時間をいただけないでしょうか。
茉莉
ーーーーー
素っ気ない言葉だけど、彼女からの連絡に心が浮き立つのを感じた。返信をしようとして、今の時間なら彼女と話せるのではないかと思い、電話を掛けることにした。
プルルルル プルルルル
発信音がもどかしいくらいにゆっくりと聞こえる。三度目の発信音の途中で音が途切れた。
『は、はい』
ああ、彼女の声だ。
「茉莉」
自然と名前を呼んでいた。一週間ぶりに聞く彼女の声に感動していると、彼女から訊いてきた。
『今、お話をして大丈夫ですか』
「ああ。本部長室に一人でいるからな。……元気だったか」
『えーと、大げさじゃないですか、その言い方は。それとも富永さんは体調を崩されたのですか』
回らない頭でありきたりなことを言う俺って……。軽く反省しながらどこにいるのか聞いて、メッセージについて聞いてみた。
どうやら電話で言える話ではないようだ。……当たり前か。少し強引に俺の部屋で待っていてほしいと告げた。少し間が空いて、彼女は了承してくれた。
会議室に戻りながら、彼女との会話が夢じゃなかったよなと、何度も携帯を確認したのだった。