100 日曜日は……法事
つつがなくという言い方は変かな。でも、何事もなく法要は終わった。今は料亭に移動をして、昼食……じゃなかった。会食の真っ最中です。
今回の法事は母方の曽祖父母の法要だ。曽祖父が二十三回忌、曾祖母が十七回忌だった。法要に出席したのは私の母方の祖父母、叔父夫妻、その子供のいとこ3人。それから、祖父母の兄弟、叔母の兄弟。それから私の父方の祖父母と伯父夫妻とその子供たち。他の親戚は呼ばれていないので、なんとなく意図を感じてしまったのだけど、気のせいではないよね。
それでも和やかに会食が済んで、祖母の兄弟と叔母の兄弟は先に帰って行った。
私も帰ろうとしたら、祖父母に止められてしまった。
「茉莉、いい機会だから話がしたいのだが」
と言われたのよ。私は座り直したの。もうみんなの話し合いは済んでいたのか、母方の祖父が口を開いた。
「茉莉、そろそろ仕事を辞めて、こっちに戻ってこないか」
「どうしてそんなことをいうの。私はちゃんと仕事をしているわ」
「それはわかっている。それどころかお前の有能ぶりは、こちらにまで聞こえてきているくらいだ。だからな、お前の力を今度はこちらで発揮してくれないか」
祖父は真剣な目をして私のことを見てきた。私もまっすぐに祖父の目を見返した。
「それって、おじいさんの秘書をしろということなの?」
「わしはもう引退するから、英治の秘書をしてくれると嬉しいの」
私は叔父のほうに視線を向けた。
「叔父さんも私に戻ってきてほしいと思っているのですか」
「私も茉莉の評判を聞いているよ。出来れば戻ってきて、その力をうちの会社のために役立ててほしいと思っている」
「私があの会社を選んだ理由を知っていますよね」
「もちろんだ。だけどそのアレクサンドルも、亡くなっただろう。彼に会えるかもしれないということで入った会社だったのなら、もういる意味はないのではないかい」
「最初はそうでしたけど、今は違います。私は仕事にやりがいを感じているんです」
私は叔父の目をしっかりと見返したのでした。