98 わかってそうな友人に訊いてみた
「ごめんね。お邪魔させてもらっちゃって」
「こっちこそ。二人の初夜を邪魔しちゃってごめん」
リビングに落ち着いたところで愛花に謝られたので、私も結婚後の大切な儀式の邪魔をしたと、形式として謝っておく。
「あー、いいの、いいの。もうさ、入籍はとっくに済ませてたし、一緒に暮らして何年も経つもの。親孝行のための結婚式だったからさ。今日は疲れるだろうから、家に帰ったら眠るだけのつもりだったのよ」
笑っていう愛花に、田村も笑みを浮かべながら頷いている。……まあ、ね。いろいろあったものね。そこいら辺も知っている身としては、よく田舎での結婚式を了承したなとは思ったのよ。
「うふふっ。これで、あっちで好き放題できるわー。式の費用も親持ちで、一切かかってないのも嬉しいしー」
少し黒い笑みを浮かべているけど、ウエディングドレス姿の愛花はとっても可愛かったからいいとしよう。
「それで、宮下のことだっけ。あいつのことは気にしなくていいからな」
「そうよ。世間体を気にして、女性に気のあるふりをしたんでしょ。鈴音さんは単純だから引っかかったんでしょうね」
「あー、やっぱり。鈴音から聞いた時に違和感があったのよ。宮君からはぜんぜんそういうアプローチはなかったし、態度もねえ。見ていれば誰のことを気にしているかは分かったからさ」
私の言葉に愛花と田村は驚いたような顔をしてから、顔を見合わせた。……って、私が気がついているとは思ってなかったのかい。
「茉莉が私達の趣味に寛容だったから、他の人のことも偏見の目で見ることはないと思っていたけど……でも、なんでわかったの?」
「えー、見ていればわかるじゃない」
絶句する二人。……えーと、普通のことよね?
「まあ、いいわ。茉莉だもの。でも、嫌じゃないの。普通に考えたら、男が男を……なのよ」
「別に、そこは気にしないよ。私に実害がなければね」
そう答えたら、微妙な顔をする二人。
「それじゃあ、宮下が大石との結婚を本気で考えていたとしたら、お前はどうする?」
「冗談……じゃないんだね。えーと、待って。それじゃあ……宮君は、鈴音を巻き込んで、外堀を埋めようとしていたんだ。まあ、これは私に男の影がないからだったんだろうけどね。……これはさっき愛花が言った『世間体を気にして』に関係があるのね。私と結婚して得られるものは……ゲイじゃないという評判かな?」