96 土曜日は友人の結婚式です!
ホテルに着いて披露宴会場の案内板で場所を確認して移動した。受付には見知った顔がいた。
「茉莉~。久しぶり~」
「ちょっと、その挨拶じゃなくて、受付としての対応をしようよ」
あっ、という形に口を開けた後、畠山みのりは取り澄ました顔をした。
「本日はおめでとうございます」
「こちらにお名前のご記名をお願いいたします」
名前を書き終えて顔をあげてから、私は改めてみのりに笑顔を向けた。
「久しぶり、みのり。元気だった」
「もちろん。あっ、席は同じテーブルだからね。後でいっぱい話をしようね」
「そうだね。じゃあ、あとで」
新郎側の受付をしている男性にも、軽く手をあげて挨拶をしてから、私は受付を離れた。そして少し離れたところに集っている友人たちのほうへと、歩いていった。
今日の結婚式は高校の友人の式だ。それも3年の時にどちらも同じクラスだった同級生同士。高校の時にはこの二人がこうなるとは、誰も予想していなかった。本人たちも付き合い始めた時に「なんでこうなったのだろう?」「それはこっちのセリフだ」と言っていたのを、私は身近で見ていた。
新郎の田村祐樹は、大学が私と同じだった。けど、学部が違うから彼との接点はほとんどなかった。大学の友人たちは主に同じ講義をとっていたか、サークルで知り合って仲良くなった奴らだ。田村とはどちらも被らなくて、確か1年の6月くらいにすれ違ってお互いに「あっ!」となったっけ。
新婦の赤堀愛花は、私とは大学が違ったけど割合近い大学だったので、うちと愛花の両親の策略で同じアパートに住んでいた。……というか、よく同じアパートで部屋が空いていたなと思ったのよね。
そういうわけで、二人の馴れ初めから恋人に発展することになったことやらを、知っていたのでした。