閑話 お疲れ様……の、金曜日
今日は岸本と手分けをして、営業について取引先に謝罪をしてまわった。それぞれが担当している、一社に謝罪をするだけで済んだので、夕方には2課に戻ってこれた。
昨日と今日は本部長としての仕事は入っていなかった。
で、本当ならこんなことをせずにとっととマンションに帰りたいと思っていたのに、なんで俺はここにいるのだろう?
この前とは違う居酒屋に、2課の面子だけで集まって酒を飲んでいるのだ。もちろん事務の女性たちもいるけど、歓迎会の時と違ってすごくおとなしい。
……というより、これはなんなんだ。俺以外、いつの間にかカップルと化している気がするけど、気のせいじゃないよな。時々女性たちが助けを求めるような目で、俺のことを見てくる気がするのも、気のせいではないはずだ。
俺がここにいる意味ってないんじゃと思った時に、携帯にメッセージの着信音が鳴った。開いてみると、秘書室長からだった。呼び出しの文面に、内心助かったと思ったのは、内緒だ。
「富永さん、どうしたんですか」
「悪いな、呼び出しなんだ」
「あー、それはー。了解です」
岸本が機嫌よく答えた。岸本の隣に座っている三隅が、悲痛な顔を向けてきた。三隅は岸本に肩を抱かれてがっちりガードされている。……というか、二人の関係って何なのだろうか?
いやいや。それよりも、抜け出す口実が出来たんだ。さっさと、行くことにしよう。
俺は岸本に万札を数枚渡すと「あんまり羽目を外すなよ」と言いおいて、店を後にしたのだった。