94 木曜日に……帰省する
駅に着いたところでメッセージをいとこに送った。本当なら明日実家に帰る予定でいたから。実家は人が住まないと傷むからと、いとこが3年前から住んでくれている。でも、私が帰って来る時には、彼は自宅へと戻ってくれるのだ。
実家に帰る前に、お寺に寄ることにした。今年はお盆には帰らないつもりでいるから、先にお墓参りを済ませておこうと思ったの。
途中で買ったお花やお線香をお墓に供えて、手を合わせた。
お寺にも挨拶をしていこうと本堂のほうに向かったら、そこに見知った姿を見つけた。
「茉莉ちゃん、おかえり」
「拓士君。どうしてここに?」
「義也さんから、茉莉ちゃんが今日帰って来るって、連絡をもらったんだ」
にっこり笑顔で言う拓士は、母方のいとこになる。私がメッセージを送った義也は父方のいとこだ。祖父母やおじたちだけでなく、いとこたちも私のことをとても気にかけてくれている。
「もしかして迎えに来てくれたの?」
「ううん。ここで会えたのは偶然だよ。もしかしたら会えるかなとは思ったけどね」
にこりと笑う拓士の後ろから、祖母と叔母が顔を見せた。
「まあ、茉莉。今日帰ってくるだなんて聞いてないわよ」
「あら、おかえりなさい、茉莉ちゃん。お墓参りをしていたのね」
「ご無沙汰しています。おばあちゃん、叔母さん」
「積もる話は車に戻ってからにしましょう」
少し強引に車に連れていかれてしまった。車までの会話で、三人は日曜日の法事の前にお墓の掃除と、あれこれをしていたという。そのまま車に乗り祖母の家へと着いた。
結局夕ご飯を祖父母と叔父一家と食べた後、実家へと送ってもらった。家を預かってくれる義也は、私が来るまで待っていてくれた。入れ替わるように拓士の車に乗り、自分の実家へと帰っていった。
私はそれを見送った後、家の中に入った。先にお風呂に湯を入れておこうと浴室に行ったら、もうお湯が張ってあった。どうやら義也が気を利かせてくれたようだ。
いろいろ片づけて戸締りを確認した後、私は仏間に布団を敷いた。布団に横になったけど、やはり今夜も眠れそうにないと思ったのでした。