11 いろいろな……危機? -お姫様抱っこ-
軽々と抱き上げられて運ばれた私は、ひとまず高そうなソファーに降ろされた。
「着替えてくるから待ってろ。逃げるなよ」
睨むようにそう言って、富永氏は出て行った。う~ん、どうしよう。逃げられるとは思えないから、その選択肢はないとしても……。
立ち上がるとまだフラフラする。やはりまだアルコールが抜けるまで時間がかかるようだ。なので、仕方がない。四つん這いになって、這ってトイレへと向かった。
もう一度膀胱をからにしたら、少し体が楽になった気がする。そのまま洗面所によって手を洗わせてもらい、ついでにコップを借りてうがいをした。
「動く元気がでたと喜ぶべきか?」
呆れた声が聞こえてきてそちらを見ると、ラフな格好に着替えた富永氏がいた。
「生理現象には勝てませんから」
そう答えたら「ああ」と、微妙な顔で返事をされた。とりあえずリビングに戻ろうと富永氏の横を通り過ぎようとしたら、またつかまってしまった。本日四度目のお姫様抱っこですな。
ソファーに降ろされる時に、今更だけど聞いてみた。
「重くありませんでしたか」
「いや、軽いくらいだろ」
……一瞬何と比較されたのか気になったけど、スルーすることにした。富永氏はキッチンのほうへ行って、ミネラルウォーターとコップを持って戻ってきた。渡された私は素直にコップに注いで一息に飲み干した。やはりお酒を飲むと喉が渇くんだよね。
「お前って、酒に強いんだな」
「そうみたいです。うちの両親の家系はどちらも酒豪とかで、飲み比べで負けたことがないと聞いています」
「なんだ、そうか」
ん? なんだって、なんだ?
そんな会話をしながら、富永氏はウロチョロと……じゃなくてあちこち動き回っていた。目の前のローテーブルの上には、箱ティッシュや鏡、そばにはゴミ箱まで用意してくれた。これは化粧を落とせということか?
そして、今更ながらに気がついた。泊まるということはすっぴんを見せることになるではないかと!