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閑話 トラブルの……水曜日

「あの、課長。大石さんは今日も来られないくらい、体調が悪いのですか」


 水曜日、2課に顔を出したら、彼女の前の席の女性に訊かれた。


「ん? ああ、大石君は体調が悪いわけではないんだ。用が出来て休みを取ったのだが、もともと今週の金曜と来週の月曜、火曜も休みを入れてあったから、そこまでまとめて休むように言ったんだよ。今まで、彼女はあまり休みを取っていなかったみたいだからな」


 彼女の勤務状況を調べた結果を思い出しながら、俺はそう答えた。彼女はあまりまとまった休みを取ったことはなかったとわかったのだ。親父たちに彼女が休むことを伝えたときにも、「いい機会だな」と言っただけだった。


 女性は「そうですか」と呟いて、少し青ざめた顔でパソコンに向かいだした。


「どうかしたのか?」

「あっ、いえ、大丈夫です」


 引きつった笑みを浮かべて、女性は言った。少し引っかかったが、あまり強く出てパワハラとか言われるのは勘弁願いたいので、そのままにしてデスクに届いていた書類の確認に入った。


 本日は珍しく本部長として動くことはない日だ。午後にも会議などはないので、課長の席に座って事務仕事をしていた。


 そこに永井が外から戻ってきて、女性のところに来た。


「三隅さん、資料は出来ているかな」

「すみません。あと少し、お待ちいただけませんか」


 それを聞いた永井の眉が上がった。


「どういうことかな? 僕が頼んだのは先週の金曜だよね。君は月曜の午後までに出来ると言ったじゃないか」


 女性はそれには答えずに唇を噛みしめて、パソコンの画面を見つめている。その様子に永井の眉間にしわが寄った。


「難しい資料を頼んだわけじゃないだろう。前に作ってくれた比較対象資料を、別の年度で欲しいと言っただけだろう。それなら同じやり方で数字を変えるだけだから、出来るはずだ。先方を待たせているんだ。早くしてくれ!」


 女性は画面を睨むように見ている。課内にいる人間は二人のことを凝視していた。女性の顔色が悪い気がして、もしかして具合が悪いから仕事に集中できないのかもと思い、声を掛けようとしたら、女性が呟くように言った。


「出来ません」

「はっ? なんだって」

「だから、そんな資料は作れないんです。あれは私が作ったものじゃなかったもの!」


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