93 引きこもりの……水曜日
水曜日、私は自分のアパートで目を覚ました。昨日は鈴音に話を聞いてもらって、気持ちはかなりすっきりした。
それに大切な人を亡くすことばかり考えていた私は、相手に同じ思いさせるかもしれないということに、今まで思い至ることができなかった。どうしてそこまで頑なに思い込んでいたのだろう。
それと、「今だから言うけど……」と、鈴音が教えてくれた話。宮君こと宮下君は、大学の時から私のことが好きだったそうなの。私の家族が亡くなってその後の私の様子に、何も言わずに見守っていたそうだ。
鈴音は何度か告白しろと言ったらしいけど、宮君は「大石はまだそんな余裕がないだろ」と、見守り姿勢を貫いていた……らしい。「結局はヘタレなのよ」と、鈴音はバッサリと切り捨てていたけどね。
想像がつかないけど、強引に迫られたりしていたら、何かが変わったのだろうか?
そんなこともあって、今日はずっと悶々と考え続けていたの。
夕方になって出た結論は、結局宮君のことは恋愛対象には見れないだろうということだった。
そう、やはり思い浮かぶのは、富永氏のこと。どんなに宮君のことを考えようとしても、いつの間にか富永氏のことを考えてしまっていたのだ。
でも、まだ……私は踏ん切りがつかなかったのでした。