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外話 母は考察する……

「凛香だけが悪いわけではない。私も今回のことは小細工をさせ過ぎたと思う。あちらの希望に添えなかったのだから、提携の話も白紙に戻ってしまうだろう。計画より遅れることになるかもしれないが、誠心誠意お願いをして、もう一度一から始められるように手をつくすことにしよう」


 社長をしている兄が、妻の凛香義姉さんの肩に手を置いて労わるようにしながら言った。


「それは……まだ早いと思うわ」


 気がつくと、私の口から言葉が滑り出ていた。部屋の中の視線が私に集中したの。


「どういうことだ、春菜」


 兄が眉を寄せて私に聞いてきた。私は纏まらない言葉を、考えながら口にしていった。


「えーと、確認をいいかしら、兄さん」

「何をだ」

「あちらの条件は『茉莉さんが幸せになることを前向きに考えるようになるようにすること』だと、私は聞いているのだけど、それで間違いではないのよね」


 兄は訝しげな顔をしながら、「そうだ」と頷いた。


「それなら、大丈夫よ」


 私は確信を込めて言った。


「どうしてそんなことが言えるの、春菜さん。私達は初手から間違えてしまったのよ。茉莉さんのあの様子は、恋愛でひどい目に合って、もう恋をするつもりがないと考えたじゃない。だから、克明と会わせて茉莉さんが恋をするようにと、画策したのじゃない。それなのに根本が違っていたのよ。もう無理じゃないの」


 凛香義姉さんが悲壮な顔で言ってきた。優しい義姉は、茉莉さんの境遇に同情してしまったようね。部下としてもかわいがっていたと聞いているしね。


「落ち着いて、凛香義姉さん。心配しなくても大丈夫よ。私は前の茉莉さんは知らないけど、今の茉莉さんを知っているわ。彼女にも変化が起きているのよ。それもいい方向に。そうでなければ、克明が先ほどのことを知るわけがないもの」


 凛香義姉さんは瞬きを繰り返して、私の言葉を理解しようとしている。


「茉莉さんは克明に心を許しているわ。そうでなければ、克明に辛い記憶を話すわけがないとおもうのよ。それに克明のことをもっと信じていいと思うわ。私達の息子(・・・・・)はいい男ですもの」


 私は自信をもって言い放った。


「そうだな。あいつは自分が決めたことは実行に移す男だ。茉莉君に信頼されている」


 夫もしばらくしてから、同意の声をあげてくれた。私はにこりと笑うと言った。


「だから、信じて見守りましょう」


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