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「訂正させてちょうだい。そもそも魔王も含めて、あなたたちが亜人と呼ぶ人たちは決してひどいことをするような存在じゃないわ」


 ティアリーゼは自分の見てきたものをこんこんと語る。

 お喋りなキッカのことも、人間に怯えていたメルチゥのことも。もちろん、夫となるシュクルについても話した。


「私に尻尾を撫でてもらうのが好きだって言っていたわ。一日中そうしてもらいたがるの、あの人は」

「魔王が……?」

「本当に……?」

「そんな、ありえない……」


 信じられない気持ちはティアリーゼにも理解できる。今もなお、この国には亜人に対する勘違いが根強い。

 だからこそ、今回の結婚を決めたのだ。


「本当はこんな人たちなの、って言ってもすぐには受け入れられないでしょう? でもいつかは共存できると思うの。その第一歩として、それから最初の一人として、結婚することにしたのよ」

「ティアリーゼ様……」


 ミリアが呆然とした様子で立ち尽くす。

 誰もが戸惑いと驚きを見せていた。


「でも、それでは政略結婚と同じです。ティアリーゼ様はしあわせなのですか?」


 そんな問いが投げかけられた。

 知らず、ティアリーゼは笑ってしまう。


「ええ、幸せよ。だって初めて好きだと思える人と、一生を添い遂げられるんだもの」


 ティアリーゼのその顔を見れば、真実を告げているのだとわかるだろう。

 恋しい相手との結婚を控える一人の女性の姿がここにあった。

 照れたはにかみも、未来への期待にきらきら輝く目も、ここにいる女性たちは友人や家族の結婚を見て知っている。

 そこにまた、質問が飛んだ。


「ティアリーゼ様は魔王を愛していらっしゃるのですか」


 声がした方を見て、ティアリーゼは深く頷く。


「とても。……大好きなの」


 きゃ、と悲鳴に似た声が上がった。

 しかしそれをどうこう言う余裕はもうない。


(余計なことを言い過ぎた気がするわ……!)


 急に恥ずかしくなったティアリーゼはその場にしゃがみ込んで、自分の顔を押さえた。

 触れなくてもわかるほど熱くなっている。きっと鏡を見れば真っ赤になった自分が映るのだろう。

 そして、そんなティアリーゼの姿をここにいる全員が見ていた。


「ごめんなさい。今の……忘れてほしいわ」

「すみません、ティアリーゼ様っ!」


 ミリアがティアリーゼの前に膝をつく。

 その目は、先ほど憤っていた人物とは思えないくらい興奮に輝いていた。


「私、誤解していました! このお詫びは最高のドレスを作ることでさせていただきます……!」

「私もそうさせていただきます!」

「ティアリーゼ様、私も……!」


 各地から似たような声が上がり、すぐにてきぱきとまたドレス作りが始まる。

 これまでの沈んだ声でなく、はきはきと明るい声で次々と指示が飛んだ。いまいち乗らなかった調子もぐんと上がったようで、作業の速さが桁違いになっている。


「寸法を測りますので、そちらに立っていただけますか!」

「う、うん、わかったわ」


(誤解は解けたけど……解けたけど……)


 まだ顔を覆っていたかったが、寸法を測るなら手は身体の側面に下ろしていなければならない。

 なんだかおかしなことになってしまったと恥ずかしさをこらえる。それでも、ここにいる僅かな人たちに受け入れてもらえたことが嬉しかった。

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