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 会話を楽しみながら三人で街を回る。

 初めて見る街には亜人しかいない。人間はティアリーゼぐらいしか見当たらなかった。

 タルツの城下町とは違い、あちこちに出店が出ている。

 知った匂いもあれば、知らない匂いも漂っていた。おいしそうだと思うもの、なんだこれはと顔をしかめそうになるもの、ティアリーゼにはわからないことが多すぎて逆におもしろく感じてしまう。

 売られているものも本当に様々だった。恐らく亜人の種類が多いからなのだろう。


「あそこに売っているものはなに?」

「木の実をハチミツに漬けたもの。小さい仲間が好む」

「小さい仲間?」

「あれだよ、あれ。ネズミとかそういう奴ら。シュシュからしたらちっこいもんな。あ、でもそれ言ったら俺から見てもそうか」

「キッカさんはなんの鳥なんですか?」

「鷹。かっこいいだろ」

「よくない」

「なんでシュシュが答えるんだよ。俺はこいつに聞いたの」

「ティアリーゼは私以外褒めない」

「褒めさせない、の間違いだろ。いっちょまえに独占欲なんか覚えやがって」


 笑ったキッカがシュクルを小突く。

 しゅう、とシュクルが鳴き声を上げてよろめいた。尻尾がばたばた暴れている。

 二人はさっきからそうして何度もじゃれ合っていた。

 ついにティアリーゼはその様子を見て笑ってしまう。


「まるで兄弟みたいだわ」

「俺が兄貴なら、あんたは義理の妹になるわけだ。人間の妹かー。くちばしねぇのがなー

うーん、うーん……。まぁいっか、許してやる」

「なぜ、クゥクゥの許しが必要になる?」

「兄貴だからだよ」

「いらない」

「お前な!」


(シュクルにこんな友達がいてくれてよかった)


 キッカは面倒見がいいのか、ちょくちょくシュクルに話題を振っては会話を盛り上げていた。

 ティアリーゼにも同じように振舞い、三人の時間は和やかに過ぎていく。

 やがて、街の広場に出た。

 そこにも並んでいた出店のひとつに、シュクルがふらりと近付く。


「シュクル?」

「なんか気になるもんがあったんだろ」


 どうやらそこで売っているおもちゃに心を奪われているらしい。

 釣り竿のような棒の先に蝶を模した飾りが付いている。振り回せば蝶がひらひら舞うようで、他にも目を輝かせた子供たちが集まっていた。


「あいつ、ああいうの好きだからな。追っかけたくなるんだろ」

「キッカさんはあの人に詳しいんですね」

「いんや? そうでもねぇよ」


(そんなことはないと思うけれど)


 ちらりと盗み見ると、キッカは仮面の奥から温かい目でシュクルを見つめている。

 本当に兄のように見えなくもなかった。


「……あのさ」


 同じくシュクルを見守っていたティアリーゼに、キッカが話しかける。


「なんでしょう」

「あいつ、変わり者だし世間知らずだけど、悪い奴じゃねぇんだ。いろいろあったからズレた人生送ることになっただけで」

「……はい」

「ほんとにあんたのことが気に入ってるんだと思うよ。俺に会わせるぐらいだから」


 シュクルは子供たちに混ざって蝶を目で追っている。

 相変らず、人間とはほど遠い獣らしい仕草だった。


「……あんた、あいつを殺しに来たらしいな」


 キッカの静かな声に、ティアリーゼは息を呑む。

 しかし、偽ることはしなかった。

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