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 あの日から、ティアリーゼは一応シュクルの恋人になった。

 ティアリーゼから特に伝えていないにもかかわらず、メルチゥは嬉しそうにしていたり、トトは苦い顔をしていたりと、どうやらシュクル経由で広まっているらしい。


(……事実だからまぁいいとして)


 満月のきれいな夜、ティアリーゼはベッドの中で寝返りを打つ。

 いつもは広々と眠っているのに、今日に限って狭いのはシュクルのせいだった。

 ティアリーゼが外から戻ってきたとき、この魔王は既にベッドの中で暖を取っていた。

 しれっとした様子で待っていたと告げ、なにを言っても動こうとしない。


「……もうちょっとそっちに行ってほしいの」

「落ちる」

「そんなに狭くないでしょう」

「狭い」

「誰のせいなのかよく考えてみてね」

「……これ以上、小さくはなれない」


 そう言いながら、シュクルは一生懸命身体を縮こまらせる。


「自分の部屋で寝た方が伸び伸び眠れるんじゃないかしら?」

「この方がいい」


 毛布の下でシュクルの手がそろりと動く。

 突然手を握られたティアリーゼはぎょっとしてしまった。


「眠るときは寂しい。一人だから」

「……じゃあ、仕方がないわね」


 そう言われてしまうと、本当に仕方がなかった。

 魔王たるシュクルの添い寝に付き合うような相手はいない。となると、恋人という扱いになったティアリーゼがその役目を務めるのは当然のことだった。

 そして悔しいことに、ティアリーゼはそうやって求められることを喜んでしまう。


(……ずっと勇者としてばかり求められてきた。でも、シュクルは違う。何者でもない私の側にいたいと言ってくれる……)


 少しだけシュクルの胸に顔を寄せてみる。

 ほう、とティアリーゼが息を吐いたそのときだった。


「っ! ど、どこ触ってるの」

「柔らかい」

「だ、だめだってば……!」


 おとなしく手を繋いでいればいいものを、シュクルは意外に落ち着きがない。ティアリーゼの身体を好きなように撫で回し、その感触を確かめる。


「潰してしまいそうだ」

「わかったから、もう……」

「……なんだ、これは」

「下着を引っ張らないで!」


 危うく下着を奪われそうになり、慌てていたずらな手を止める。

 困るのはシュクルになんの色めいた雰囲気もないことだった。

 触れても大丈夫だとわかったからか、単純にこの触れ合いを喜び、楽しんでいる。

 いっそ下心でもあった方がまだ拒みやすいのに、あまりにも動機が純粋すぎてティアリーゼも今一歩拒み切れない。

 だから、以前よりずっと馴れ馴れしくなったシュクルに自由を許してしまう。

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