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激突戦域

 まさか本当に真正面から突破を試みるとは思わなかったし、そしてそれを成功させてしまう小隊もどうなのかと思った。

 後方からの支援射撃を受けたとはいえ、敵の戦力およそ200人に対し割り当てられたのは13人、それにアトラとティオとサイクロプスが付随するのみ。鈴蘭以外はバンカーの制圧訓練を行った12人で、それをティーが直接指揮する。コンサート会場のヒッピーよろしく敵陣中央へ殺到した小隊はサイクロプスを先頭に強行突破を試みて、目に見える人間は軽機関銃で、車両が出てくればサイクロプスが間髪入れず撃破し、無傷のまま反対側へ到達、指揮部隊を捉えた。撃たれるようなら鈴蘭がどうにかしようとしていたが、結局、皆と同じようにライフルを撃っただけである。


『ScMW-3が標的を定めた、気を付けて』


「何ですソレ!?」


『あなた達がサイクロプス2って呼んでるもの』


 戦闘が僅かながらひと段落したあたりで通信機に響く少女の声、アステルヒントの時間である。わかってはいたが鈴蘭のイヤホンにしか届いていないようだ、あまり広めない方がいいのだろう。時間を置かずに4脚直方体の急速接近をティーが伝えてきて、車両は進路を変更、丘を越えて奴の視界から消えようとする。

 ScMW-3、どうやらアレは3号機のようだ、型番が3で名前が2とはややこしい。


「アトラさん! その子の形式番号って!?」


『コイツか? ScMW-2だ』


「ていう事はサイクロプス1が2号機で!」


『いやScMW-1は設計上の欠陥が原因で計画段階での中止を食らってる、実機が存在するのはコイツからだからコイツが1号機で間違いない。そしてScMW-2は私が知る限り5機の同型機が作られたから……』


 ややこしい!


『まぁそんな事はどうでもいいだろ。我々がサイクロプス2に当たる、その間に敵指揮部隊を撃破しろ』


「勝率は?」


『やってみなけりゃわからんな』


 味方のサイクロプス1は取り繕っているものの万全にはとても見えない、明らかに一度大破している。武装は20mm機関砲2門と105mmライフル砲1門、それと地雷投射機。ハッチを開けて出てきたアトラは巨大な携行式レールガンを担いでおり、おそらく本命はそちら。一度身を隠し、サイクロプス1が気を引いている間にあれを弱点へぶち込むのだ。


「あっちに加勢させてください」


「痛い思いするかもしれませんよ?」


「大丈夫」


「なら許可します」


 迂回路を取る車列から鈴蘭1人、シオンに告げたのち飛び降りて向こうと合流する。アトラに続き降りてきたティオはレールガンと同じく人間には扱えそうにないほど重厚な、セラミックと思われるシールドを装備しており、彼女を降ろし次第サイクロプスがハッチ閉鎖、旋回して地雷を投射する。

 迫撃砲と同じように上方へ撃ち出し、落下させる展開方法だ。レーダーユニット跡地に装着された筒の束から十数個を一度にばら撒き、落着後に起動信号を送ることで敷設を完了、筒の束はパージされた。金属製の物体が真上を通った時のみ反応するセンサー式、これでサイクロプス2の主砲を狙う。その間、それぞれ手頃な遮蔽物を見つけて身を隠した。


『ティー、こちら地下工場。カムパネルラが起動した、これから地上に出す』


 通信機からフェイの声が漏れると同時に前方からも特徴的な4脚走行音、間も無く2機のサイクロプスが対峙する。まず仲間の方が105mm砲を発射、火薬式らしい爆音と爆煙を伴うそれは敵前脚のシールドに命中するも弾かれ、装甲板を歪ませるに留まった。反撃に受けたのは56mmレールガンだ、派手な音も反動も出さない弾体が超高速で突進してきて、本体右側面へ着弾、ツギハギの装甲を難無く貫通、大穴を残す。

 サイクロプス1の本体内部は大部分が空洞、居住スペースである。床下のバッテリー、駆動系統、センサーポッドとCPUユニットが無事なら問題ない。被弾を物ともせず機関砲と合わせて射撃を続け、じりじりと後退、敵を地雷源に入れようとする。しかし埋設しないばら撒いただけのものなので近付いてくれず、こちらから見て右へのスライド移動を始めた。なので後退停止、敵に合わせて時計回りに地雷源を回る。


「こるぁぁぁぁ!! 野外を全裸で四足歩行するとはいい度胸だな喰らいやがれぇぇぇぇ!!」


 そのうち敵の側面がこちらを向いた、ここぞとばかりにアトラが岩陰から飛び出す。人間には持ち上げる事すら不可能なハンドレールガンを軽々と振り回し、ギリギリ耳で聞こえる高音を放出、バシュン!と弾体を発射した。防御行動を取れなかったサイクロプス2は本体への直撃を許して左ミサイルコンテナを喪失、弾体は装甲へ深く食い込み大きくよろめく。そのまま地雷源に突入、連続爆発するそれらによってレールガンは少なからず損傷した。アトラは直ちに再装填作業を開始、反撃に受けたガトリングガンの掃射はティオがシールドを構えて射線に割り込み凌ぐ。フリーになったサイクロプス1は今のうちに背後に回り込む、真後ろから105mm弾でどつかれたサイクロプス2、形勢不利と見るや50mほど後退した。


「アステル! 弱点わかりますか!?」


『明確に脆いって言えるのは後脚の付け根だけだね』


 遮蔽物からの露出を最小限にしつつライフルを照準、5発撃ち込む。直ちに誘導が開始され、散開してサイクロプス2を飛び越えたのち再集結、執拗に背後を狙う。寸分違わず後脚へ着弾したそれらは炸裂し、ほんの少し痙攣、後退をやめた。


「いいぞ撃ち続けろ!」


「は……うわっ!」


 次は弾倉分撃ち切ってやろう、と思ったのだが、ミサイルが発射されたのを見て身を隠す。着弾による轟音と地響き、降りかかってきた土をやり過ごして、改めて顔を出せば、同時にサイクロプス1がレールガンを受けるところ。かなり良い当たり方をして105mm砲の砲身が吹っ飛び、用のなくなった薬室と弾倉を直ちに捨てる。サイクロプス2も先程の地雷が効いたようで、発射後すぐにレールガン基部から妙な金属音を出し、動きを見る限り右側へ回せなくなったらしい。

 とにかく連射、6.8mm弾の炸裂によって動きを止める。その間に急接近したサイクロプス1、盛大な金属音を立てて前脚両方を敵に突き立てた。取っ組み合いを行う両者を反時計回りにアトラとティオが移動し、2発目のハンドレールガンを叩き込む。やはり貫通しなかったが、それで奴の撤退条件を満たしたようで、強引にサイクロプス1を振り解き、明らかな逃走準備を始めた。


「逃すな! 逃した回数分パワーアップしてくるぞ奴は!」


 大急ぎで3発目を装填するアトラ、彼女をシールドで守るティオ。最初に追撃姿勢を取ったのはサイクロプス1で、残った機関砲を撃ちつつ追い縋ろうとし。


「姉様!」


 と、そこであらぬ方向から砲弾が飛んできた。


「はぁっ!?」


 徹甲弾である、ソニックブームを伴う衝撃波で鈴蘭の髪を巻き上げ、サイクロプス1の後部下側へ命中、バッテリーを損傷させて大量のアーク放電を起こした。


「ふざけんなクソ野朗ども! テメエらの目は……駄目だ伏せろ!!」


 動力を失って崩れ落ちるサイクロプス1、後ろからは戦車と思しきキャタピラ音。どさくさ紛れに反転しようとするサイクロプス2へ向け咄嗟に駆け出して。


 しかし、直前に相手のレールガンが光った


『鈴蘭!!』


 気がした。

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