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反転攻勢1

 ズン、ズンと地響きが何度も続き、その度バンカー内で土色の柱が打ち上がる。拡散砲撃は収まらず、人や物が吹き飛んでいく。

 しかし一番の問題は最初の1発だ、よりにもよって病院に着弾した。総隊長を含む怪我人が運び込まれる直前の事態に収まりかけた無線通信の混乱は再発、鈴蘭も足を止めた。


『状況報告! 砲撃により送電ケーブル断裂! 南部一帯が停電してる!』


『おいおいどうすんだ! 人運んでいいのか!?』


『構うな連れてこい! 電子機器が使えなくなっただけだ治療を止める理由にはならん!』


 まずい事になっている、せっかく安全になりかけた内部がまた危険に晒され出したし、負傷者が十分な治療を受けられなくなった。

 取れる対応はひとつしかない、可能な限りの戦力を発射点へ投入する。既に四駆やらハーフトラックが用意されつつあり、5人乗れる四駆には12.7mm重機関銃が、ハーフトラックには40mm擲弾発射器が装着されている。普段なら牽引して外まで持っていく榴弾砲はその場で展開され、レア中隊の要請に合わせて早くも射撃を開始。


『あぁクソ……ブラボーチームは先行してください、負傷者移送を終えたら私とアルファも続きます』


「はいよ」


 シオンに返答しつつヒナがトラックに飛び乗る、アトラも他の兵士に奇異の目、というか「あんな奴いたっけ?」みたいな顔されながらも乗り、鈴蘭は彼女に引き上げて貰う。直ちに車列が出発、敵は北だが、北門はあの有様なので西門へ。


『レア、現在状況は?』


『背後の敵の撃破と壁際までの後退には成功…でも正面の敵に半包囲を受けて、火力不足で反撃も無理そう……』


『よしよし、大丈夫だ私が来た。これから敵背後にバックアタックを仕掛ける、怯んだ瞬間に増援と接触して包囲し返すのだ』


 5割増しの速度でバンカーを脱出、草原に出た。北の方には僅かながら部隊の移動が見え、撃ってる向きからして味方、退路維持を図る行動らしい。それを支援するのは後続の仕事だ、本部隊は大きく回り込んで野砲だか迫撃砲だかわからないが榴弾の発射点へ肉薄する。当然、指揮官も近くにいる筈なので、ついでに倒せずとも脅かすくらいはしたい。


『ではこれより反撃に移る、我々の家をめちゃくちゃにした奴らに罰を与えてやりたまえ。まずは北北西8kmで重迫撃砲撃ちまくってイキってる部隊だ、速やかに排除しろ、これ以上の砲撃を許すな』


 ふと後ろに目をやるとヘリが1機、一目散に上昇していく所だった。あれがこちらの指揮官、よほどの事が無いと落ちないし、敵のすべては筒抜けだろう。彼女の指示通りに車列は北北西へ、荷台では地図が広げられ使用ルートの検討が始まる。


「川沿いにここまで進め、そこから稜線を避けつつこの丘を回れば気付かれずライフル射程に収められる」


「なるほど……あんた誰だ?」


「お前達がいつか見た悪夢だ」


 あーだこーだ言い出す前にアトラが地図を指差し、それをそのままマジックペンでなぞって、運転手に渡す。名前を聞かれた彼女はそんな感じでぼかしながらアンチマテリアルライフルを背中へ、いつの間にか調達していた、というかヒナのレッグホルスターから抜き取ったサブマシンガンをひらひら。「近距離でも私は最強だ、何なら凸砂してやる」なんてのたまるアトラをヒナがジト目で見ているのはいいとして、車列は川沿いの道を選択、最大速度で走っていく。バンカーは……バカスカ撃たれて爆煙まみれ。


「車を降りたら私が先頭になる、お前達は左右を警戒しろ。手頃な遮蔽物を見つけるまではそのままだ、敵は見つけ次第撃て」


 間も無く壁は視界から消える、丘陵地帯の谷部分を縫うように走り続けて、やがて川沿いを離れ、丘を回っていく。榴弾の発射音が近い、すぐにまた戦闘だ。


「止めるぞ! 準備しろ!」


 トラックが急減速、完全に停止した瞬間に全員降りる。トラックはまた走り出して稜線を越え、その先でグレネード弾をぶちまけ始めた。


「よし行け! 走れ走れ走れぇぇ!」

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