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掃討戦2

「気をつけろ! 2階の窓から凄腕が狙って……」


 病院の正面に到着した直後、そこを守っていた兵士の眉間が吹き飛んだ。まさしく糸の切れた人形のように倒れ、飛び出そうとした鈴蘭はティオに、死体は他の仲間によって遮蔽物まで引っ張り戻される。一目でわかる即死であり、そのため奥歯を噛み潰す以外には何もせず、彼は目を離して制圧射撃に戻った。


「姉様」


『任せろ』


 アトラが言った途端、ほんの僅かな遮蔽物の隙間を通り抜けてきた25mm弾が病院2階に着弾し、凄腕とやらを排除する。爆発によって散った破片がぱらぱら落ちる中、先程と同じくティオが突進、フェルトが続き、鈴蘭が援護する。まもなく正面玄関付近は一掃され、それ以外の場所にも味方兵士が殺到し出す。


「3階の手術室! そこにガーリーが隠れてるから見つけて司令部まで連れてく!」


 突入直前、メルが合流してきた。すぐにフェルトがショットガンを投げ渡し、重アサルトライフルをその場に置いて、コッキング1回、爆破準備の進む玄関横に張り付く。さらに閃光手榴弾も1個、ベルトのカラビナにひっかけた。

 ヒナとアトラはやや離れた位置から支援射撃を継続するようだ、上階からの攻撃を封殺している。というかあの男、怪我の手当てなんてできるのか、遺伝子をいじくり回して赤い触手を作ったり青い触手を作ったりしかできないと思っていた。

 C4設置が終わった、鈴蘭もライフルを手放してショットガンを構え、姿勢を低く、衝撃波に備える。


「ゴー!」


 起爆したC4がドアを吹き飛ばす、シェルターから会議室に突入したように爆煙へ飛び込み、転がっていたり顔を覆っていたりする北連兵をセミオートモードで順番に撃ち抜いていく。12ゲージの散弾は受けた相手を一撃で戦闘不能に追いやり、1人あたり2発撃てと教えられているライフルやサブマシンガンより幾分か早く制圧を完了。エントランスをクリアしたら後は時間との勝負だ、フェルトとティオは1階の掃討を開始、こちらはメルに追従して3階手術室へ直行する。階段を登り終えたところでメルが発砲、彼女の背後に現れた1人に向かって鈴蘭も撃ち込む。「あのバカ騒ぎカルテットは美少女をコマンドーに進化させるプロか!?」「やっぱりオテンバになった!」「諦めろおかげで今助かってるだろ!」とかいうのが聞こえてくるも気にせず、階段前の安全を確認したのち一度立ち止まって交代で弾を補充、それから手術室まで進む。曲がり角を曲がる直前でメルが閃光手榴弾を腰から掴み取り、カラビナに固定していた安全ピンはそれで抜ける。内側からロックされた扉の前では数人が強引にこじ開けようとしていたものの、壁でバウンドさせたそれが足元に転がるや叫び、すぐに炸裂、高音と閃光により1人残らずその場でよろめくくらいしかできなくなった。一方的に散弾をぶちまけ、全滅をしっかり確認してから扉まで移動、メルが代わりに扉を叩き始める。


「ガーリー!」


「ガーリーはやめろ!」


「パパーー!」


「もっとやめろォォ!!」


 点灯していた手術中のランプが消えると扉はスライドしていく、しかし壊されかけていたためか途中で止まってしまい、大人1人がなんとか通れる隙間から医師2人、手術室から持ち出せるありったけの医療用品を詰めたケース、バッグを引き出し、最後にガーリー。他に生存者はいるかと問い、「見てわかれ」と返答されたので救出活動は完了、病院内の完全制圧に目的を移す。といっても1階はもう片付いただろう、2階も時間の問題、3階は…救出活動の間に鈴蘭1人で捜索、ショットシェルを2発消費して、ひとまず敵は湧かなくなった。


「医者の救出終わり、リーダーは?」


『意識が怪しくなってきた、血が止まらない』


「ちょっと待ってガーリーと代わる」


「ガーリーはやめろと」


「お兄ちゃんと代わる」


「やめんか!!」


 どうしても彼を援交男に仕立て上げたいらしいメルがヘッドセットを外して渡し、シオンと少し会話する間、左右を警戒して待つ。


「心臓近くの血管を損傷したな……現場での処置は不可能だ、ここに連れてこい、心臓バイパスの準備をしておく」


 簡易診察の結果、とのことである。


「だってさ」


『オーケー……どちらか片方、迎えに来てください。もう片方はティーのところへ、北部の奪還をするそうです』


 メルがハンドサインで撤収を宣言、登ってきた味方と入れ替わりで3階を降りる。フェルトとティオはやはり2階の掃討まで終えたようだ、すぐ合流できた。


「鈴蘭、外の2人と合流してティールート行って、そっちのが良さそう」


「どうしてです?」


「火事場の馬鹿力の伸びしろがダンチ」


「?」


 よくわからないが、まぁいい。

 言われた通りスナイパー組と合流しよう。

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