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フィールド調査1

「では鈴蘭、ここからは敵が潜入したと仮定して行動しますが、なぜその敵はコソコソと忍び込んだのでしょうか?」


「えぇと……見つかったら倒されるから?」


「概ね正解です、正面衝突ができない戦力で最大限の戦果を上げるには内部で守られた重要目標を直接叩く必要がある。状況によっては弾丸1発で部隊まるごと退ける事も不可能ではありません、例えば指揮官とか、どんなに強力な部隊でも脳みそがなければ動きませんからね。ですから潜入が判明した時、真っ先に安否を確認するべきはコレ」


「コレとは何かね……」


 司令部、本部等と呼称される建物である、背後に核シェルターの扉を背負い、データセンターが隣接する。建屋自体はそう大きなものではなく、外周部の家屋2件分、20畳程度でしかない。施設の大部分があるのは地下だ、シェルターを避けるため曲がり曲がった蛇行の極みみたいな形状のトンネルが収まっており、最深部に司令室と作戦会議室を持つ。

 その地下への入り口部分、壁にもたれかかってやはりレポート作成をしていたティーを指差しつつシオンは言った。途端に彼女は苦笑いを始め、ペンを走らせる手を止める。


「戦闘隊において中隊長は中間管理職に相当します、配下にある小隊の能力を把握し、大隊長の性格を考慮した指示を下す。大隊長は小隊ごとの特徴なんて知ったこっちゃないので、ティーがいなくなれば我々に的確かつ具体的な指示が飛んでくる事はありません」


「大隊長も小隊長も同じでしょうよ、規模がちょい上下するだけだ」


「作戦時は100人ごとの扱いが一番多い」


「それはまぁ」


 続けてそんな会話をしながらシオンは上を見る、建屋の屋根にはレアが乗っていた。腕を吊る三角巾は外れたものの左肩は未だギプスで盛り上がったまま、右手で双眼鏡を目に当て周囲を観察中。

 主目的に移ろう、玄関ドアの前に立つ。見張りは1人、その場を動かない定点型で、今もすぐ近くに突っ立っているが、彼の注意はサーティエイトやティーの方へ露骨に向いている、石でも投げられたらすぐ目を逸らすだろう。右、左と視線を回して玄関口から死角になっている場所を捜索、手頃な物陰をいくつか見繕ったら巻尺の端を持ち、そこまでメルを走らせる。一番近い所で10m弱、目を逸らした一瞬を突いて、というのは不可能に近い。


「やっぱよく考えてんな……フェルト、裏見てきてください。ドアの幅はどうだ?」


「フルサイズのライフルだと構えたままは無理そう、サブマシンガンか、姐さんのCQBでギリ。ドアから階段まで5.5メートルで……」


「……細かすぎない?」


「「え、そーぉ??」」


 フェルトは建物の背後を確認、ヒナは窓枠の僅かな突起を使って屋根に登り、手を伸ばして鈴蘭を引き上げる。シオンとメルはあっちこっちを計測しまくっていたが、ティーに怪訝な目をされたので2人一緒に首を傾げ、彼女の胸に巻尺巻き付けた。「やめたまえ!」なんて言われてから巻尺はしまい、ティーのレポートを覗いてみる。

 北側に大隊規模の敵部隊が展開、北門は既に制圧されている。バンカー内には3個小隊しか残っておらず、全隊が集結するまで48時間必要。という問題だ、要するに39人で48時間耐えろという事。


「北門まで押し戻さないと勝ち目ないでしょう」


「問題はそれをどうやってやるかだ、無理にやったら半分死ぬ。北門以外の3方向も防御しなきゃならんし、序盤でそんなに減ったら耐えきれない」


「ロケットランチャー大乱舞で」


「遮蔽物に傷入れたくないな……」


 サーティエイトより明らかにハードな問題だった、どうすりゃいいのか検討もつかない。レアも同じ内容だろうか、複数人で1問だからきっとそうだろう。


「小隊長の見解はー?」


「門の上の防護壁、爆破したら綺麗に落ちてくると思わない?」


「すげえ豪快な事言ってる」


「ひと通り教え込んだらあんな感じに」


 そういえば特訓してるとか言っていたな、ポンコツ隊長は卒業したのだろうか。工場の時は小隊長とは名ばかりに引っ付いてくるだけだったし、もっと切羽詰まった場面であんな感じだったらさすがに困る。


 まぁすぐにわかる、お手並み拝見は後でいい。


「よし、ここは十分だ、次に行きますよ」

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