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やっぱ違うの見っける

 許可無く採っていいマツタケは日本にはほぼ存在しない、とりあえずこれは言っておくべきだろう。

 マツタケの自生地は狭い、とにかく狭い、思わず3度言うくらい狭い。それ故ただの臭いキノコとさんざん言ったが日本国内では高級食材である、100gで万超えるとか頭おかしい。そのため保護の観点も含めて山ごと買い占めるのが普通なのだ、足で踏まれるとすぐ死んでしまうし成長速度も遅い、本業の方々としては素人に踏み込まれたくないのである。

 マツタケの自生が確認されている山はすべて個人所有となっており、そこにあるものを採ると窃盗罪に問われてしまう。お金を払えばマツタケ採り体験できる所もあるが、まず見つからない上にやはり参加費が万を超える。ただそういう所はマツタケを使った食事がセットになっているのが普通なので、少なくともマツタケにはありつける。


「開いちゃってるのはどうすんの?」


「食べたい?」


「………………」


「ヘリコプター値切ってみようかぁ」


 とまぁ日本国内でのマツタケの偉大さを説いてはみたがサーティエイトにとっては臭いキノコであるので、聞いてきたヒナに聞き返すとめっちゃ嫌そうな顔をされた。帰り際フェイに見せてみよう、きりりんなら価値をわかってくれる筈。

 ひとまず現在までの成果を確認してみよう、捜索時間30分の間に総数12本、うち4本がツボミである。マツタケは土中から完全に顔を出す(見つけやすくなる)と傘を開いてしまうので、必然的に発見難度はツボミの方が高くなる。それでも僅か30分でツボミ4本は入れ食い状態だ、数百年もの間手付かずだったのだから、いかにパンダ級貧弱繁殖力のマツタケとて広範囲にコロニーを形成できていた。これならもうしばらく探し続ければ余裕で灯油代を稼げるだろう、焦る必要は無くなったと判断する。


「続きは明日にして、日が暮れる前に金庫開けちゃおうかぁ」


「それが妥当ですな」


 菌糸の付着している可能性のある松の木付近を避けつつ、移動を再開する。今となってはもはやどうでもいいが開かずの金庫が未だお待ちだ、とりあえず開けてやろう。


 そんな感じで廃屋まで辿り着いた、3階建てのプール付き、どうして金持ちというのは家にプールを持ちたがるのか。3階と2階の半分は完全崩壊済、残りも人が行き来できる場所は少ない。すぐに地上部を捜索し終え、最近爆破されたらしき壁を発見、穴をくぐって地下への階段を降りていく。

 地下には朽ち果てたバーカウンターとビリヤード台、その先の小部屋にワインセラーと金庫があった。


「じゃあこれ」


「はい?」


 メルがタブレットと聴診器みたいな器具を用意する間、シオンは鈴蘭にナイフを手渡す。見ない間に円筒が破損しており、現状ただの大型ナイフ。それを握らせて、目を白黒させる彼女に一言二言説明、頷いた鈴蘭、なんかそれっぽく構えて「えぇぃ!」なんて横に振り抜く。

 キン、という音を立てて金庫の天板が落ちた、鈴蘭に続いてフェルトとメルが目を白黒。


「あ、開きました……」


「ん…まぁいいや、奴らのドリルを無駄にできれば」


 聴診器の装着をやめたメルが扉の断面から内部へ棒状の器具を差し込んでシリンダーを直接操作、扉を開放する。


「超ボロボロの本」


「ゴミか」


「プログラムの記述みたいだね、なんで紙にしたのかわかんないけど。それと預金通帳、株券、こっちはほんとにゴミ」


 とりあえず金塊は無かった、がっかりである、マツタケがあるので致命傷ではないが。当時は莫大な財産だったろう紙クズを投げ捨て、USBメモリやらチップやらは生きているかわからないがメルの懐へ。


 最後、書類の山にまぎれて円盤が1枚あった。


「それは?」


「DVDかブルーレイか、これは死んでても蘇生できそうだね、持って帰ろ」


「金目のもんは無しか……」


「開かずの金庫なんてそんなもんだよ、諦めてマツタケ集めて総隊長から絞りとって貯金箱いっぱいにしないと」


 すり切れて文字の読めないディスクケースをひらひら振ってメルは言う。その後ディスクは収納、立ち上がり


「総隊長……あ」


 しかし会話の最後、何かを思い出したらしくメルは声を出し。


「試験やるとか言ってたあの人」

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