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怒る

「お待たせしました! 指示通り武装してきまし…うぇっ」


「あぁ、色々教える事になってるんだったねぇ」


 家の前である、普段ならトライポッドが立てられる焚き火には近場の廃墟から拾ってきたらしいY字型の棒2本、その上に金属棒が渡され、その端にクランクを溶接してある。豚とか鶏の丸焼きをぐるんぐるんするやつだ、出発時にはこんなものは無かった、必要になるシーンが無かったので。

 鈴蘭がやってきた時フェルトはそれをひたすら空回ししながらシオンとメルを正座させていた、笑顔だったが、クランク回転をやめない腕から真の感情を読み取れる。


「でもごめんねぇ、すぐに何とかしないといけない問題があってぇ」


「も…問題が……」


「このままだと冬越せないんだぁ」


 具体的に言うとコヤツらにやられたのは灯油を買うための貯金である、灯油はいい、明かりにもなる。

 春まで十分耐えられたはずの貨幣が入った貯金箱は現在元の3分の1の重さになってフェルトの左手、右手のクランクがカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラ音を立てる中、既に震え始めている2人を無視、鈴蘭に笑顔で告げる。怯えてしまった、何故だろう。

 思いつく対処は3つ、石炭にする、向こう3ヶ月朝食を抜く、今すぐ高額報酬クエストを受ける。とりあえず石炭は避けたい、木炭と同じに扱うととんでもない煤が出るし、一酸化炭素で下手すると死ぬ。そして朝食も嫌だ、どうしてこのアホどものためにそんな苦行をせねばならんのか。

 なので実質1択である、直ちに仕事を探してくる。


「だってティーがメシ作ってくれないから」


「堂々と飾ってあったし」


「喋っていいなんて言ってないよぉーー?」


「…………」


 さてどんなタイプの仕事がいいか、といっても鈴蘭の教育係を任された以上、下手な事はできない、彼女を同行させるだけでも報酬が発生するからである。

 だったらこれも1択だ、そこらを捜索して高価なものを拾ってくる。


「あっ…そっそれなら私ひとつ知ってます! 開かずの金庫が見つかって」


「詳しく」


「詳しく!」


「ひぇっ…!?」


 などと考え始めた途端、鈴蘭が言うのでフェルトはクランクから手を離す、家から三角巾とエプロン着けたヒナ(ホウキ装備)も飛び出してくる。


「あぁあの……南西の方に」


「地図!」


「はい!」


「移動手段!」


「は……「あ゛ぁぁぁぁぁぁぁッ!!」」


 いきなり正座を解いたシオンとメルがのたうち回るのはやはり無視、(ヒナが)持ってきた地図を3人で囲む。

 そう遠くはない、アサルトギアの設計図を求めて旧軍施設をガサ入れした廃都市のすぐ近くだ、激戦区内だが、あそこを巡回する敵部隊の行動パターンは概ね把握している、通り抜けるだけなら手間はなかろう。開かずの金庫とやらがあるのは郊外の一般家屋、写真は無いが、"金持ちの豪邸"で外観を説明可能という。発見は2日前、その時は手持ちの装備での開放ができなかったらしい。


「そっ…そういや2日前に超硬度ドリルの個人発注が工場に送られてました……! ちなみに工場ってこないだ占拠したAI兵器工場の事ね……!」


「バンカーとの物資のやりとりは週に1度だけ……!」


 生まれたての子鹿にすらなれない2人がぽつぽつ言う。その情報はデータセンターから拾ってきたものだろう、信用度は高い。そして輸送部隊の定期便は明日の朝、つまり第一発見者はそこで初めて金庫を開ける手段を得ると思われる。やるなら今日だ、放置されてるものを先取りしようが文句を言われる筋合いは無い。


「でも中に何か入ってるとは限らないんじゃないんですかね?」


「それはほんとに開けてみないとねぇ、入ってなかったら廃墟でチタン集めかなぁ」


「それ見つかるまで帰れないやつですよね……」


 AI兵器を片端から壊してパーツ回収でもいいが、それだと弾薬とカロリーを消費する、できれば1発も撃ちたくない。とにかく低燃費に最大限の利益が必要なのだ、チタンとか金塊とか金塊とか金塊とか。


「後は…アトラ(ナイトメア)の存在をリークして破壊命令受けてから」


「ほんっとにフェルトっていざとなったら容赦ないわよね……」

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