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ユメ

「アンタたちってさ、夢とか見るの?」


「夢?電気羊のか?」


 最後の1発は右下腹部へ命中、姿勢制御機構の中枢部分を破壊し、下半身の動作を不可能とした。着弾した腹部には直径8.6mmの穴が開くのみだが、背中側には大きな破口があり、出血が如く潤滑油を流し、漏電した電気がバチバチとスパークしていた。半ば土砂に埋まったナイトメアはヒナがサブマシンガンの銃口を向ければ嘲るように笑ったものの、これではもう間も無くだ、回路が焼き切れ、バッテリーが漏電し切れば動かなくなる。


「自分が人間なのか不安にでもなったか?感情を持つAIがあるなら、半分機械の自分は何なのだ、と?」


「別に、聞いてみただけ」


 ハ、と笑みを深め、しかしすぐに目を細めて息を吐く、実際には吐くような動作をしただけだが。ヒナから目を離し、焦点を遠くへ。

 次に口を開くまでかなりの間が開いた気がした、太陽は傾き、空はオレンジに染まりつつある。同じ方向をじっと見ていると、なんだかもうどうでもよくなってきて、トリガーから指を離す。


「どこまで行ってもこの世は地獄だ、殺しても殺してもお前達は湧いてくるし、管理者からの信号は止まらない」


「管理者?」


「我々すべてに指示を出す、最上級AI、どこにあるのかは知らんが」


 セレクターをセイフティへ、サブマシンガンをだらりと下げる。


「バグってるの?」


「そうかもな、いつからか人を殺して回る理由がわからなくなった。人間が絶滅したら?本当にすべて良くなる?その後我々はどうなる?……お前達も同じだ、我々に勝っても、この終わった世界で何をする?生き続けても辛いだけだ、虚しいだけだ。特に…お前は…失ってきたものが多すぎる」


 急速に動きが鈍っていく、もう時間は残っていない。眼球だけでまたヒナを見て、僅かに哀れむような顔をする。


「その胸に抱えたどす黒いものから逃れる手段は…他には無いぞ……負けた私に…もう言う権利も無いかもしれんが……」


「…………」


「いいのか…?辛く…ないか……?」


「大丈夫」


 一歩前へ、首すら動かせなくなったナイトメアに入って、呟くように言う。


「死ぬまでは生き続けるよ、私は」


「……そうか…」


 それを聞いて満足げに少しだけ笑う。

 時間だ、あれだけ鳴っていた放電も静かになっていた。


「夢…か……眠る必要が無いからな…夢を見た事は無いが……」


 最後、振り絞るように最初の質問に答えて


「夢は……持ってたかもなぁ……」


 そうして彼女は目を閉じた。

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