奴らは撃った
「速い、100キロ出てるかも」
最初は双眼鏡を使っていたが、距離が詰まるにつれ追い付かなくなった、肉眼に切り替える。
4足哺乳類、特にトラやライオンに近いフォルムをした奴だ、センサーポッドも胴体も空気抵抗軽減を図ったと思われる曲線メインの形状で、塗装は暗い緑、オリーブドラブになっている。
まず目についた特徴は関節の多さだ、金属の塊にも関わらずその動作は獣にほど近い。しなやか、かつなめらか、跳ねるような走行に応じて削った草を巻き上げつつ最初に家屋ひとつを襲撃、そこからミサイルを発射して前線へ輸送中だった迫撃砲を爆砕する。
武装はサイクロプスに近い、胴体右側面にやはり剥き出しで装備されたレールガンはほぼ同じ形状な事から口径56mmと推定、それから背中の垂直発射式ミサイルランチャーと、胸部に抱える小型ロケット弾ポッド。左側面には太くて短い砲身の束が見えるが、何なのかわからない。
「名前は何だ? サイクロプス2か?」
『いやマンティコアになった、私は推薦しといたけど本部さん方はその6文字にかなりのトラウマがあるらしい。何はともあれアレの後継機なら出し惜しみしてる場合じゃねーべ、155ミリ魔力誘導貫通弾を使用する』
「うっわ、1発あたりのコスト見るとミサイルのが良くない?」
『この場にミサイルはない……それに飛翔速度がダンチ」
ずっと通信機越しに話していたティーが丘を登ってサーティエイトと合流してきた、カメラに繋がっていたコードを抜き取って双眼鏡に接続、それを通してマンティコアを捕捉する。
魔力誘導弾、他の弾種と比べてアホみたく高価なため使った事が無いのだが、目標識別に人の目を使うようだ。簡単にまとめれば、アイツに当たれ!って念じればアイツに当たる。今発射されようとしているのはそれプラス発射後再加速効果付きの複合弾、外れるかも、という心配をする事はまったくの無駄である。
『認識完了』
「てぇっ!」
号令一声、榴弾砲から赤色の閃光が飛び出した。ライフル弾とは違ってすぐに再加速はせず、雲の上まで飛翔したのち急速に軌道を変え、そこで青く発光する。そこからは一瞬だ、加速作用の残光が混じって紫になった噴射光が赤に戻っていくグラデーションのみが肉眼で捉えられる唯一の現象、加速したな、と思った時にはもう突き刺さっている。トーチカに撃ち込まれるバンカーバスターが如き噴煙を上げ、近くにあった木を衝撃波でなぎ倒し、通常弾より数段大きい爆音を撒き散らす。マンティコアと名付けられた新型は沈黙したように見えたが、ティーは次弾を装填させつつ迫撃砲部隊と連絡、車両の放棄と効果確認を支持した。
「いや待て……後退! 隠れろ!」
その数秒後、粉塵からマンティコアは飛び出してきた。右後脚に損傷が見られるものの機能を失っておらず、胸部からロケット弾を発射、味方部隊を追い散らす。
「嘘だろアレを避けるのか!?」
「魔力誘導弾の絶対必中伝説が!」
「次弾目標識別! 発射角マイナス40! 撤収準備だ! 次撃ったらトンズラするぞ!」
言われ、慌ててメルとシオンが機材を回収、コードはそのままにして車両へと戻る。辿り着いて、荷台にそれらを放り込んだあたりで2発目の閃光が丘を掠めるくらい浅い角度で空中を走ったが、奴の走行音が途絶える事はなく、そしてまっすぐこちらへ向かってくる。
「どうするんです!?」
「安心なされいここはホームだ! 支援も増援もありったけ受けられる! 味方が来るまで耐えればいい!」
「でもここに住んでる人が!」
「それを考えるのは私達の仕事さね! キミはとにかく自分の命だけを」
「来たぞ!!」
収納なんてしてたら絶対間に合わない榴弾砲本体は放棄、こんな事もあろうかと照準システムを構築するCPUユニットは簡単に取り外せるようになっているのでそれだけを回収し砲兵全員が車両に乗り込む。まだ乗っていないのはメルとシオン、すぐ横で話し込む鈴蘭とティー、荷台へよじ登る最中のレアのみである。そこで奴の姿が丘の上に現れた、緩やかな弧を描く軌道でこちらへさらに接近し、距離200mで停止、レールガンを動かし始めた。
サイクロプスよりはずっと小さい、全長7m程度である。にも関わらず火力は倍以上、速度も向上している。まぁ予想自体はしていたのだ、あの時クーが現場にいたので、「シャーシとモノコックの合いの子みたいな中途半端な骨格で中スカスカ、ふた月くれれば全長半分にするか、もしくはレールガンダブルにできる」というのは既に判明しており、次くるならたぶんこう、というのも考えていた。実際その通りのフォルムだった、問題は、クーの宣言を両立してきたという点で。
「応射!」
「は…はい!」
「あっ。いやキミは撃たなくてい……!!」
と
咄嗟にティーが叫んだ言葉にメルとシオン、レアは当然ライフルを向けるのだが、それに鈴蘭まで続いてしまうと彼女は慌てた。何故かというと、急いで出てきたために撃ち方を教えていないからだ。
周りが静止しようとする中、なんのこっちゃ知らない少女がまったくなっていない姿勢でぎゅうとトリガーを握りしめ




